プロローグ
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二十歳になった今日。
「んんー………」
いつものように目覚めた朝。
いつものように部屋の窓を開け、伸びをひとつ。
——バサバサッ
「あ。」
月に一度の
伝書鳩が手紙を運んでくる日でもあった。
「チャンからね。ありがとう。」
鳩から受け取った手紙を開くと
少しクセのある見慣れた文字に顔が綻ぶ。
『ミドリ。
お前がここまで成長してくれたこと
おれも嬉しく思う。
同封したペンダントを大人になったお前に贈る。
鉱物の盛んな島で
珍しい石から作られたものだ。
誕生日おめでとう。
いつもミドリの幸せを願ってる。』
封筒から出てきたのは
鮮やかな朱色の小さな石が丸く輝くペンダント。
「キレイな赤……」
鏡の前でそれを着けてみると
嬉しさと少しの照れ臭さで、再び頬が緩んだ。
〜遠いあなた、愛し君。〜
「おはよう!叔母さん。」
「おはようミドリ。誕生日おめでとう。」
「ありがとう!ねぇ、見て見て。チャンからの誕生日プレゼント。今、届いたの。」
テーブルに2人分の朝食を並べる叔母さんに
私は胸元のペンダントを得意げに見せる。
「まぁ!キレイね。それによく似合ってる。」
「プレゼントなんて届いたの初めて。」
「もう二十歳だものね。チャンさんも嬉しいのよ。」
「あとチャンからのお金、ここに置いておくね。」
封筒をテーブルに置き、席に着くと
叔母さんはその封筒を私の前に置き直した。
「これからは、あなたの好きに使いなさい。」
「えっ、でも……」
「いいから。今日、持っていきなさいね。」
「……ありがとう。」
「お礼ならチャンさんに。」
「うん!」
二十歳になった今日。
私はお世話になった叔母さんの元を離れて
一人暮らしを始める。
ずっと前から、そう決めていた。
「チャンさんには報告したの?ここを出ること。」
「まだ。次の手紙に書くよ。」
私が「チャン」と呼ぶその人は
親を亡くしてから叔母さんの元で暮らす私のことを
ずっと気にかけてくれている人。
物心ついた頃から、月に一度
このようにチャンからお金が届いていた。
どこにいるのかも、何者なのかもわからない。
ただわかっているのは
この広い海のどこかにいる旅人で
私を大事にしてくれている、ということだけ。
チャン。
きっと、優しくて素敵な人。
顔も知らない、遠いあなた。
私はいつか、あなたに会いたい。
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