アネモネの恋 〜あなたを信じて待つ〜/ロシナンテ
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ひとつのベッドで
朝までミドリを抱き締めて眠った。
朝から花の仕入れに行くという彼女に合わせて
一緒に早朝に起きる。
店の裏口から外へ出ると
ひんやりと空気は冷たく、まだ薄暗い。
「ちょっと待ってて。」
一度店の方へ行ったミドリを
タバコを吸いながら待った。
建物の間から見える暗い空を見上げる。
次はいつ、この街へ
ミドリの元へ帰って来られるだろうか。
「ロシー。」
少ししてミドリが戻ってきた。
手には大きな青い花束が抱えられている。
「これ、あなたに受け取ってほしい。」
「この花は…」
「そう、アネモネ。」
「青いのは初めて見た。」
「私の気持ち。」
ミドリは笑顔だった。
「こんなの航海の邪魔かもしれないし、すぐに枯れちゃうと思うけど。」
「いや、嬉しいよ。」
勤めて明るく振る舞っていたが
強がりの笑顔だとわかる。
最後にもう一度、強く抱き締めた。
「行ってらっしゃい。その子を絶対に助けてね。」
「あァ。行ってくる。」
口付けをして、別れた。
何度も振り返って手を振る。
おれもミドリも、見えなくなるまで笑っていた。
会えない間も、思い出してもらえるなら
笑顔の方がいいもんな。
ーーーーーーー
ローを連れて海へ出て、最初の島に到着した。
ミドリからもらったアネモネの花は
潮風のせいか、やっぱりすぐに枯れてしまった。
「少しいいか。」
「どこ行くんだ?」
「本屋。」
一つ目の病院を出た後
次の病院へ向かう途中の本屋に寄った。
調べたいことがあったからだ。
「花の本?似合わねェ。」
「うるせ。」
ローにからかわれながら、そのページを探す。
「アネモネ…アネモネ……あった。」
青のアネモネの花言葉。
『あなたを信じて待つ』
——あなたに受け取ってほしい。
——私の気持ち。
別れ際のミドリの笑顔を思い出す。
「ぐっ…うっ……ミドリ……」
「なっ、お、オイ!何泣いてんだこんなとこで!!」
おれはローに引きずられながら本屋を後にした。
涙が止まらない。
おれは本当に幸せもんだ。
どこまでもどうしようもねェおれを
変わらずずっと愛してくれていた。
ミドリに出会い、愛された。
それだけで、おれの人生は輝かしいものになった。
必ず、ローの病気を治して
もう一度、ミドリに会いに行く。
真っ赤に咲き誇る、あの花束を抱えて。