アネモネの恋 〜あなたを信じて待つ〜/ロシナンテ
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いつものように彼女の部屋で食事をして
タバコに火をつけたときだった。
「ねぇロシー、今度さ…」
「ん?」
食器を片付けながら、ポツリとミドリが言った。
「会いたくなったら、港へ行ってもいい?」
初めて彼女がおれに甘えてくれた。
そのことは嬉しかったが
とても賛成できる提案ではない。
「港へ行けば、あなたの仲間たちの船があるんでしょ?」
「港には来るな。」
つい声を荒げてしまった。
ミドリの表情が一瞬にして曇る。
「……ごめん、ミドリ。あんなヤツらに君を会わせたくないんだ…」
手を伸ばして髪を撫でると
ミドリはその手を振り払う。
「あんなヤツらって?仲間なんでしょ!?私、ロシーの仲間なら怖くないよ。仲間なのに、恋人も会わせられない?」
今度はミドリが声を荒げた。
「一緒にいてもうすぐ一年になるのに、大好きなのに……私、時々あなたがわからない。」
俯いてその場に座り込み
膝の上で震えるほど強く拳を握っていた。
「あなたは何者なの……?」
おれは何者か……
全身を震わせて、声を震わせて苦しむ君を前に
全てを話そうと決意した。
タバコの火を消して、目の前に座り直す。
「……話を聞いてくれるか?」
真っ直ぐにおれを見据えて頷くミドリに
全てを話した。
本当はおれは海軍本部の人間で
今は任務でドンキホーテファミリーに
潜入していること。
ドフラミンゴは実の兄だが
兄とも思いたくないほど憎んでいること。
同様にその仲間たちも自分の敵であること。
ミドリは何も言わずに最後まで聞いていた。
「そんな中、君を見つけた。」
頬に手を添えて、顔を覗き込めば
おれを見つめる大きな瞳から涙が流れる。
「こんなに悲しませるなら、やっぱり…愛するべきじゃなかった。」
釣られておれも、目頭が熱くなる。
「でもどうしても、お前が欲しい。」
ボロっと涙が出た。
ミドリも小さな手をおれの頬に寄せた。
向かい合って、互いの涙を互いで拭う。
「不安にさせてごめんな。」
軽々と持ち上がる小さな身体を抱き寄せると
膝の腕に乗せ、できるだけ優しく胸に抱いた。
「話してくれてありがと。私は大丈夫だよ、ロシー。」
ミドリの腕が、背中に回された。
「一緒にいると決めた時から、傷付くことは覚悟してた。でも私、少しも傷ついてないよ。」
また、おれは彼女に救われた。
抱き締める腕に力を込める。
「ちょ…苦しいよ…」
「あァ、悪い!」
慌てて離すと、いつもの笑顔がそこにある。
「もちろん不安はあるけど、あなたといると幸せなの。」
ミドリは目線を合わせると
おれの両頬を掌で包んだ。
「この幸せがもし永遠じゃなかったとしても、今が幸せならそれでいい。」
そう言うと、触れるだけのキスをくれた。
「むしろ、あなたが犯罪者じゃなくてよかった。」
イタズラな笑顔を向けてそう言うミドリを
もう一度抱き上げ、その柔らかな胸に顔を埋めて
また泣きそうになったのを隠した。
君には敵わないな。
おれよりずっと真っ直ぐな強さを持っている。
「愛してる。」
自然と口から出た言葉に
君はまた笑った。