アネモネの恋 〜あなたを信じて待つ〜/ロシナンテ
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ミドリには、我慢ばかりさせていた。
その時、ファミリーは
ミドリの住む島を拠点にしながらも
航海ばかりで会いに行けない日々が続いた。
それでも、島に戻れば一番に顔を見に行く。
「ロシー。お帰りなさい。」
しばらく会えなかった後に顔を出すと
いつもミドリは「おかえり」と迎えてくれた。
変わらない笑顔に安心して、腕の中に閉じ込める。
いつものいい香りと、柔らかい肌の感触を満喫して
会えなかった時間を埋めるように強く抱き締めた。
恋仲になってすぐに
彼女の母親は隣町へ新しい花屋を開き
ここに住むのはミドリひとりになった。
会うのはいつも、花屋の閉店後。
ミドリの部屋。
彼女が作った食事と共に
楽しく話をして帰る日もあれば
会話もそこそこにベッドになだれ込み
ただその温もりに溺れる夜もある。
ミドリに触れると、おれはとても弱くなる。
今、背負っているもの全てを投げ出して
このまま2人でいたいと考えてしまう。
自分の立場を忘れないよう
彼女の部屋に泊まることだけは決してしなかった。
一晩中抱いた後、眠る彼女にキスをして船へ帰る。
『あいしてる』
ベッド脇には必ず一言メモを置いておいた。
何ヶ月もそんな生活が続いた。
ミドリはこんな自分勝手な恋人でいいのか、と
こんなことではいつか捨てられる、と
おれはいつも不安だった。
「寂しい思いさせてごめんな。」
そう謝るたびに
「生活が違うから仕方ないよ。大丈夫。私はちゃんと大事にされてる。」
彼女はいつもそう言って笑っていた。
強がっているのはわかっていた。
そんな彼女の優しさに甘えてばかりの自分が
許せなくなる日もあった。
ファミリーに身を置いている以上
いつかはこの島を出て
遠くの海へ行くことになるだろう。
どんなにミドリを想っても
愛していると伝えても
傷つけていることには変わりない。