アネモネの恋 〜君を愛す〜/ロシナンテ
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——赤いアネモネの花言葉は「君を愛す」
先ほどの、自分の言葉が頭の中でこだまする。
そんな、まさか……
「………」
「………」
何も言えなくなってしまった。
ロシーも、何も言わない。
こういう時、どうしたらいいんだろう。
ありがとうって言って、受け取ればいいのかな。
それとも…
言っていいのかな。
私もあなたが好き、って。
迷っているうちに、ロシーは帽子を深く被り直し
背中を向けた。
行ってしまう。
せっかくロシーが私にくれたのに。
何か応えなくては。
追いかけようとしたら
ロシーは何もないところで躓き、派手に転んだ。
「ロシー!!」
駆け寄って、地面に座ったままの彼の目の前に
膝を着き、顔を覗き込む。
耳まで真っ赤になった顔を隠すように
さらに帽子を深く引っ張って下を向いていた。
この人が、愛おしい。
心の底から。
こんな気持ちは初めて。
持っていた花束をそっと地面に置き
立てている彼の膝に手を乗せて
「私も、あなたが好きです。」
そう言うと、ロシーは顔を上げた。
あの優しい瞳が揺れている。
「ロシーが好きです。」
もう一度確認するようにそう言うと
ロシーの大きな手が、膝の上の私の手を包んだ。
「……………おれは…」
「…えっ……」
今、ロシーが声を……
私は驚きのあまり、一瞬言葉を失う。
「ロシー、話せたの……?」
「……周りは話したくないヤツらばかりで、話せないフリをしていた。」
初めて聞くロシーの声が頭に響く。
心臓が破裂しそうなほど、ドキドキした。
「ごめんな。」
ロシーの謝罪に首を振る。
「おれは……毎日店先で楽しそうに花の世話をする君を、いつも見ていた。」
「……そうだったんですか…」
なんだか恥ずかしくて目を逸らす。
と、頬に手を添えられ、正面を向かされた。
「ミドリ。」
まだ聞き慣れない彼の声に名前を呼ばれると
頭がクラクラとしてくる。
何も考えられなくて、ただ彼を見つめた。
「おれは、まともな生活をしちゃいないし、そのうち君を傷付けるかもしれない。」
「……海賊、だから?」
「知ってたのか。まァ色々あるんだが、否定はしない。」
本当に、海賊なんだ。
でも、今となっては
そんなこと、本当にどうでも良かった。
「それでも……」
頬にあった彼の手が頭の後ろに周り
そっと引き寄せられ、額と額が静かに重なる。
「愛してもいいか?」
なんだか涙が出そうになって
うまく返事ができなくて
何度も、何度も頷いた。
それを見てロシーはいつものように微笑んだ。
身体中が熱を帯びて熱い。
最初は怖い人だと思ってた。
大きな体に奇抜なメイクで
関わらないほうがいいと。
でも、私を見つめる瞳はいつも優しくて
気が付けば、こんなにも惹かれていた。
海賊でも、犯罪者でもいい。
傷付いてもいい。
あなたが手に入るなら。
ロシーが顔を傾けて、唇と唇が優しく重なる。
2人の足元では
花束の中の真っ赤なアネモネの花が
静かに風に揺れていた。
〜後編へつづく〜
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