この男、恋愛下手につき/ドレーク
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「おれは海軍を辞める。」
ドレークのこの一言が、私の人生を変えた。
〜この男、恋愛下手につき〜
「辞める!?何よ、急に。どうして!?」
ドレークとは、幼馴染というか、腐れ縁というか。
ドレークの親も私の親も軍人で、幼い頃から兄妹のように一緒に育ち、当たり前のように私も彼も海軍に入った。
「ミドリ、お前にはついてきて欲しいと思っている。」
全く私の問いかけの返事にはなっていなかったけど
ついてきて欲しい、そう言われて私の気持ちは舞い上がった。
「それって……」
「今後もおれのそばにいろ。」
自分の口にした言葉の意味をわかっているのか
それとも特に深い意味はないのか、平然と言ってのけるドレークとは逆に、私の心臓はドキドキとうるさくなる。
ドレークにはいつも、全くその気がなさそうで
完全なる私の片想いなんだと半ば諦めていた。
でもそんな言葉を言われてしまっては
彼のそばから離れられるわけがない。
海軍にそれほど思い入れもなかった私は
迷わず彼と共に海賊に身を落とした。
それから時は流れ、ドレークは”赤旗”、”落ちた海軍将校”などと呼ばれ、最悪の世代のひとりとして名を挙げた。
その傍ら、思わせぶりなセリフを吐いてこの私を連れ出しておきながら、決定的な言葉を一向に言ってくれる気配がない彼に、私はいよいよ痺れを切らした。
「ねぇ、どうして私を海賊の道へ連れ出したの?」
仲間たちが宴で盛り上がっている最中
少し離れた場所で、ひとり静かにお酒を嗜んでいた彼の元へ詰め寄った。
「ミドリ。どうしたんだ急に。海軍に戻りたくなったか?」
不機嫌そうに隣に腰掛ける私に
ドレークは不安げな表情を向けた。
「違う。ドレークの気持ちを聞きたいの。」
「おれの?」
「あの時どうして私にだけ、ついてこいって言ったの?」
ドレークは言葉に詰まり
困ったようにお酒を一口含んだ。
私は何を焦っているんだろう。
彼が私を必要としてくれただけで十分じゃないか。
でも、幼い頃からずっと一番そばにいるのに
幼馴染、仲間、私たちの間にそれ以上の特別な関係はなくて、いい加減そこから抜け出したいと思ってしまうんだ。
ドレークも私と同じ気持ちならいいのにって
いつも考えていた。
海へと連れ出してくれたあの日から
いつか彼の1番になれることを夢見てきたけど、奥手なこの男のことをこれ以上待つことはできなかった。
「私、嬉しかったんだよ?そばにいろって言ってくれて。」
「……あァ、そんなことを言ったな。」
思い出しているのか、少し頬を染めるドレークに
どうしても期待してしまう。
「好き。」
そっと手を伸ばして、彼の太い腕を掴むと
ドレークはビクッと体を震わせた。
「私、ドレークが好きだよ。」
恥ずかしい。
でも、この恋愛下手な男を相手に前に進むためには
私から言うしかないと思ったんだ。
「もう今のままは嫌だよ。恋人にして。」
逃がさない、とでも言わんばかりに
真っ直ぐに目を見つめてそう言い放てば
「あァ…そうだな。恋人になろう。」
ドレークは目を伏せながらそう言って
顔を真っ赤にしながら、もう一口お酒を飲んだ。
こうして、半ば強引に
私たちは恋人同士になった。
これがもう、1年も前の話になる。
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