第二章 〜焦がれる〜
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スモーカーさんの部屋へ行くのは初めてだ。
扉の前で立ち止まる。
仕事中とはいえ、好きな人の部屋。
緊張しないはずがない。
深呼吸をひとつして、トレイを片手で持ち直し
ノックをしようと手を伸ばす。
——と、中から大きな声が聞こえた。
「んなこといちいち報告してくんじゃねェ!てめェで考えて行動しろ!!」
紛れもなく、スモーカーさんの声だった。
すこぶる機嫌が悪いようだ。
それでも私は久しぶりに聞くスモーカーさんの声に
胸が高鳴った。
この扉の向こうにあの人がいる。
早く会いたい。
中から足音が近づいて来たので、ドアから離れると
勢いよく扉が開き、中から兵士さんが出てきた。
「失礼しました!!」
敬礼をし、慌ててその場を走り去る。
開いたドアから顔を出すと、眉間に深い皺を寄せ
正面の机に座るスモーカーさんと目が合った。
「ミドリか。どうした。」
中に入る。
スモーカーさんの目の前の机には
何やら重要そうな書類が山積み。
私はその隙間になんとかトレイを置く。
「メシか。気分じゃねェが…確かに腹は減ったな。」
時計を見ながらひとつ伸びをして
スモーカーさんは口に咥えていた葉巻を灰皿へ置き
書類を掻き分けて食事を自分の前へと移動させた。
食事の時間もちゃんと取れないほど
忙しいんだろうか。
邪魔しちゃいけないと思い、部屋を出ようとすると
「すぐに食う。そこで待ってろ。」
と、スモーカーさんがそう言ってくれたので
近くにあった椅子に座る。
一緒にいていいと言われたようで嬉しかった。
部屋の中をキョロキョロと見回す。
壁には海賊の手配書がたくさん貼られていた。
机の上の書類以外はあまり物がなく
ガラリと殺風景な部屋だった。
「少しは慣れたか。」
スモーカーさんの問いに笑顔で頷く。
『雑用ばかりだけど 皆優しいし楽しい』
メモを書いて見せた。
「そりゃ良かったな。」
『その野菜も私が切ったやつ』
「小せェ。もう少しデカく切れ。」
『料理長には褒められた』
「あの男はわかってねェからな。」
やっぱり、皆が思ってるほど怖くないのに。
大口を開けて食事をしながらも
私のメモを見て受け答えしてくれて
ただのお喋りがとても楽しい。