最終章 〜奏でる〜
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「……っ…っ……」
私の嗚咽だけが部屋に響いていた。
叶わない恋だとわかってたけど
諦めきれなくて
2年前も、今も
ずっとずっと、スモーカーさんを追いかけた。
やっと、掴まえた。
「泣くな。」
大きな温もりに包まれる。
起き上がったスモーカーさんが
後ろから抱き締めてくれた。
その腕の中で、私も向きを変えて
大きな体に抱き着いた。
私、この人に
もう一度、ちゃんと伝えたいことがあったんだ。
今なら、うまく伝えられる気がする。
「………っ……す……」
「ミドリ?」
まさか、と目を見開いたスモーカーさんが
体を離して私の顔を覗き込む。
真っ直ぐに
目を見て
伝えたい。
「っ……す………き……」
「お前、声が…」
「すき………っ……」
それは一度出してしまえば
どうして今まで出なかったのかと不思議なくらい
すごく自然に唇が発音をした。
「……あなたがすきです……」
忘れていた、自分の声。
でも確かに私が奏でたもの。
「…っ……だいすきです……」
言葉と一緒に、再び涙が溢れた。
「…すき………」
「もういい。わかってる。」
強く抱き締められた。
「うぅ…っ……」
いつまでも流れる涙を指で拭われて
そこに柔らかい感触。
スモーカーさんの唇だった。
そのまま耳元で囁かれる。
「そばにいろ。ずっとだ。」
もう一度、強く抱き締められる。
2人の距離はゼロになって
お互いの体温が溶け合う。
いつの間にか涙は止まっていた。
絶望的な人生を送ってきた私は
大好きな人の腕の中で今
世界一幸せな女に生まれ変わった。
いつまでも抱き締め合っていた。
私、スモーカーさんに
聞きたいことがあるんだった。
あの時、私にキスしようとしたのか。
でも、いっか。
今はもう少し、このままで。
…fin