第六章 〜告げる〜
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町から来た人や兵士さん、その家族が入り乱れ
港は多くの人で賑わっていた。
一通り見終わった後、少し離れた場所で
小さな丘を見つけた。
周りには松の木が生えていて
松の葉や枝がたくさん落ちている。
その真ん中に小さなベンチを見つけ、腰掛ける。
お祭り会場の明るい光のおかげで
あまり気にしていなかったけど
空を見上げれば、すっかり夜空に変わっていた。
少しずつ、周りに人が集まり始め
そのまま地べたに座る人、シートを広げる人
各々に準備を始める。
そろそろ花火が始まるようだ。
スモーカーさんは、まだ現れない。
ふと、杖をついたおばあさんがひとり
座る場所を探しているのるようだったので
私は立ち上がり、ベンチを譲った。
「ありがとう。優しい子ね。」
おばあさんの嬉しそうな笑顔に、私も嬉しくなる。
他に空いているベンチもなかったので
そのまま地べたに腰を下ろした。
と、同時にヒューっと音が鳴り
大きな音と共に花火が夜空に咲く。
周りがワッと盛り上がる中、私は息を呑んだ。
生まれて初めて見る花火に、一瞬で心奪われた。
視界いっぱいに大きな輪が広がった後
スッと消えていく。
何かに見惚れるとはこういうことだ。
次々に上がっては消えるを繰り返す光の演出から
目が離せない。
ふと我に返って、周りを見回す。
スモーカーさんはまだ来ない。
よく考えたら、ちゃんと場所も指定していないのに
この薄暗い人混みの中、会うことはできるのか。
仕事を終えて、来てくれたとしても
一緒に花火を見るなんて無謀だったかもしれない。
周りは恋人同士や家族連れの人たちばかり。
初めての花火。
その美しさを前に
自分の孤独を思い知らされた。
「……いい場所を見つけたな。」
ひとり感傷的になっていると
後ろから低い声が響いて、途端に顔が綻んだ。
ドサッと私の隣に腰を下ろす。
来てくれた。
この人混みの中から
私を見つけてくれた。
「たまにはいいもんだな。」
空を見上げるスモーカーさんの横顔が
花火の明かりに照らされては消える。
2人。並んで座って花火を見てる。
なんて幸せな時間だろう。
早く言いたい。
好きって言ったら、あなたはどんな顔をするかな。