第六章 〜告げる〜
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厨房で野菜の仕込みをしながら考える。
昨日抱き締められたときの
一方的じゃない温もりが忘れられない。
もしも、両思いになれたら…
そんな欲が顔を出す。
ただ冷静になってみると
スモーカーさんはこの基地の中だけでなく
海軍全体から見ても、名が知られているすごい人。
そんな人に、厨房で働くただの小娘のことを
好きになって欲しいだなんておこがましい。
片想いでいい。
でも、私のこの気持ちを知って欲しい。
そして、少しだけでいい。
私を意識して欲しい。
スモーカーさんの心の中に入りたい。
伝えたい。
好き。
「ミドリ!」
カウンターから呼ばれると
隣の先輩が「行ってこいよ」と言ってくれたので
顔を出せば、息を切らしたたしぎさんがいた。
「スモーカーさんから聞きました。昨日…大変だったね……」
私よりも泣きそうな顔をして
強く抱き締めてくれた。
「そばにいられなくてごめんね。」
『スモーカーさんが助けてくれたから
なんともない』
安心してもらえるよう、笑顔でメモを見せる。
昨日のことは
本当に、トラウマになりそうな出来事だったけど
スモーカーさんのおかげで、傷は浅く済んだ。
「本当、無事でよかった。」
たしぎさんはもう一度強く抱き締めてくれてから
食堂を後にした。
持ち場へ戻ると、先輩たちが
何やら楽しそうに話している。
「ミドリは?祭りで何が食いたい?」
「……?」
「おい、ミドリはまだ知らないんじゃないか?祭りの話。」
「そうか。来たばかりだもんな。」
「毎年夏にそこの港で祭りをやってんだよ。」
「出店が並んだりよ、花火も上がるぜ。」
「兵士達にとっても、いい息抜きなんだよな。」
『楽しそうですね』
そうか。お祭り。
そんなの、今までは縁のない人生だった。
行きたい。
スモーカーさんは、行くのかな。
でもあの人が皆とワイワイ盛り上がる姿なんて
想像できない。
そういうの、興味もなさそうだし
「仕事が残ってる」とか言って部屋に残りそうだ。
でも、誘ってみるだけならありかも。