第一章 〜始まる〜
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音の鳴らない恋の行方 第一章 〜始まる〜
ローグタウンの海軍派出所。
事件の処理を終えたたしぎが
保護した少女の様子を見に医務室へやってくると
ちょうど医療班の医師が出てくるところだった。
「先程目を覚ましました。疲労が溜まっているのと、ひどく空腹の状態です。ろくに食べていないようで。体調が安定するまで入院させます。」
「わかりました。よろしくお願いします。」
「それと、もうひとつ。彼女、失声症ですね。」
「失声症……?」
「声が出せず、喋れないんです。ストレスが原因かと思います。」
「それは父親を失ったショックで?」
「いえ、かなり前からのようです。」
「声が出るようになることはあるんですか?」
「ふとしたきっかけで治ることもあれば、このままの可能性もあります。」
医師は
我々にどうこうできる問題ではないんですよ、と
申し訳なさそうに言い残して去っていった。
入れ替わりで、少女に父親のことを報告するため
スモーカーがやってくる。
「おい、何してやがる。」
「スモーカーさん。」
「ボケっと突っ立ってんじゃねェ。あの女、中にいるんだろ?」
「はい。あ、でもっ……」
ーーーーーーー
初めての海軍基地。
ここは病室だろうか。
ベッドがいくつも並んでいるけど
使っているのは私だけ。
ぼんやりと、窓の外を眺めていると
乱暴なノックの音が響き、部屋のドアが開かれた。
「目が覚めたか。」
髪の白い大きな男の人が部屋に入ってくる。
この人、さっき私を助けてくれた人だ。
その迫力に思わず身構えてしまうと
後ろから眼鏡をかけた女性がひょっこりと顔を出し
優しく微笑んでくれたので安心した。
「こんにちは。目が覚めて良かった。この人は海軍本部のスモーカー大佐。私はたしぎと言います。体は大丈夫ですか?」
スモーカー大佐。
聞いたことのある名前だ。
きっと、この街で知らない人はいないであろう
海軍の偉い人。
たしぎさんからの問いかけに頷くと
スモーカーさんはベッドの横の椅子にドカッと腰掛けた。
「お前の父親だがな、気の毒だがすでに息を引き取っていた。」
正直、少しも残念ではない。
でもここは、娘としてもっと悲しそうにするか
涙のひとつでも流すべきなんだろうけど
あいにく瞳は乾いたまま。
反応に困り、とりあえず私はもう一度頷いた。