第五章 〜感じる〜
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それから数日が過ぎた。
あの兵士さんは変わらず
一日に何度も食堂へやってくる。
この人訓練とか任務とかないのかな?と思うほど。
たしぎさんからのアドバイス通り
何かを渡すときは手渡しを避け
出来るだけ目も合わせないよう
必要以上の話もしないように心がけた。
寮の扉を開けるたびに、目の前にいるのでは…
と不安に駆られるけど
あれから一度も現れることはなかった。
一週間ほどそんな日々を過ごしていた私は
完全に安心しきっていて
仕事終わりの夜中、誰もいない暗い廊下も
平気でひとりで歩いてしまっていた。
「……ミドリ。」
「!!」
だからその人が急に目の前に現れたときは
あの時のように、また一気に血の気が引いた。
逃げ出す暇もないまま、腕を掴まれる。
「俺を避けてただろ。」
やめて。
離して。
首をふりながら懇願するようにその人を見るけど
逆に彼は嬉しそうにニヤついている。
「声が出せねェってのは都合がいいな。」
掴まれていた腕を引かれ
後ろから抱き締められる。
「このまま連れ去っても、誰も気付かないわけだもんな。」
相手は普段から鍛えている体の大きな兵士。
抵抗しても、ピクリともしない。
「でも暴れられたら面倒だから、少しだけおとなしくしててもらう。」
誰か助けて!!
頭の中でそう叫ぶけど、口に布を当てられ
刺激臭が鼻をつく。
同時に意識が遠のき、目の前が真っ暗になった——
「てめェ、そいつをどうするつもりだ。」
「っ…中将……」
ーーーーーーー
頭に激しい痛みが走って、目が覚める。
重い瞼をゆっくりと開くと、徐々に視界が
はっきりとしてきて、見慣れない天井が映った。
知らないベッドの上だった。
あの男はどこに?
意識が遠のく前の出来事を思い出して
焦って起き上がり、周りを見回すと——
「目が覚めたか。」
「!」
側の机に向かってスモーカーさんが座っていた。