第五章 〜感じる〜
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それから数日後の非番の日。
朝からカラッと晴れていて気持ちがいい春の陽気。
たしぎさんへ、この間のケーキのお礼に
何か別の美味しいものでも買いに行こうと
街へ行くことにした。
部屋を出て女子寮の扉を開ける。
——と、
「おはよう、ミドリ。」
目の前に、あの兵士さんがいた。
全身の血の気が引いて、その場に立ちすくむ。
「今日は非番か。どこか行くの?」
腕を強く握られ
ふと、昔暴力をふるってきた父が頭をよぎった。
怖い。
どうしてこんなことをするんだろう。
力一杯に手を振り払って寮に戻り
部屋に入ってドアの鍵を閉めた。
頭が混乱していた。
どうしてあそこにいたの?
厨房に私がいないから、寮まで来たの?
それとも、非番の日を把握されてた?
怖い。
足が震えて、その場に座り込んだ。
兵士が女子寮へ入るのは禁止されている。
部屋にいれば大丈夫なはず。
それでも、しばらくその場から動けずにいた。
夜。
結局街へ行くのは諦め、一日中部屋に篭っていた。
たしぎさんが帰ってきたら
相談に乗ってもらおうと思っていたけど
隣の部屋のドアが開く気配はなかった。
今日は出払っているみたいだ。
恐る恐る部屋を出て寮の扉を開ける。
誰もいないことを確認して寮を出た。
たしぎさんに相談したい。
でも、どこにもいない。
料理長に相談してみる?
そう思って厨房を覗いてみたけど
明日の仕込みに追われるこの時間
まだまだ忙しそうに働いていた。
あまりうろついて、あの兵士さんにまた会うのも
嫌だったので、諦めて部屋に戻ることにした。
「よう。」
廊下で後ろから声をかけられ、振り向くと
スモーカーさんが立っていた。
久しぶりにその顔を見た瞬間
怖ばっていた気持ちが瞬く間に解かれる。
安心したせいか、緊張がほぐれ
同時に涙が出そうになる。
すがる思いでスモーカーさんに駆け寄り
その大きな腕にすがった。