第五章 〜感じる〜
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音の鳴らない恋の行方 第五章 〜感じる〜
G-5という場所は
海軍の中でも荒くれ者ばかりの集まりだという。
私が来るまで、基地の中の女性は
たしぎさんひとりだけだったようで
物珍しさからか、厨房で作業をしていると
入れ替わり立ち替わりで様々な班の人が
覗きに来るようになった。
お昼の忙しさのピークを終えた午後。
昼食を終えた兵士さん達が
カウンターからこちらを覗いていた。
「ほらな、あの子だよ。」
「大佐ちゃんより、か弱そうな感じが好みだ。」
「喋れないらしいが、耳は聞こえてるのか?」
「試しに名前呼んでみろよ。」
「できるか!」
「可愛いな〜仲良くなりてェな〜。」
聞こえないように話してるつもりなのだろうけど
地声が大きい彼らのコソコソ話は全て筒抜けで
恥ずかしさから居心地の悪さを感じる。
「今だけだ。そのうち飽きる。気にすんなよ。」
隣で仕込みをする先輩にそう励まされ
苦笑をもらしながら頷く。
コックの皆は、最初こそ野蛮そうだとか
怖そうだとか、失礼な印象を持ってしまったけど
慣れてくると皆気さくで話しやすく
料理に対しても真面目で腕も立ち
学ばせてもらうことがたくさんあった。
皆に刺激されて、カウンターから騒がれることなど
気にならなくなるくらい仕事に没頭していた。
「てめェらァ!!」
ふいに聞こえた声に体が反応する。
「何をこんなとこで油売ってやがる!!」
「やべ!スモやんだ!」
「逃げるぞ!」
どうやら今日のギャラリーは01部隊の
兵士さん達だったようだ。
「暇なら訓練でもしてこい、腰抜けどもが!!」
2年前と変わらないスモーカーさんの怒鳴り声に
なんだか私は嬉しくなった。
カウンターへ行くと
スモーカーさんとたしぎさんの姿。
「ミドリ、うちの兵士たちが騒がしくてごめんね。」
笑顔で首を振る。
「お昼遅くなっちゃって。まだ大丈夫?」
「2人分。大盛りだ。」
「いえ!私は普通盛りで!」
ひとこと告げて、そそくさとテーブルへ向かうスモーカーさんを慌てて追うたしぎさん。
2人とのこんなやりとりが
また日常になったことが嬉しい。
01部隊の隊長であるスモーカーさんは
いつも忙しそうで、同じ基地内にいるはずなのに
こうして顔を合わせる機会はほとんどなかった。