第三章 〜遠のく〜
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スモーカーを乗せた海軍の船は
「大佐!海王類です!!どうしたら……」
「知るか!てめェらで何とかしろ!!」
甲板で兵士達がバタバタと動き回る中
スモーカーは船内へ入り、自室の椅子に
ドカッと座ると、机に足を組んで乗せる。
と、机の上に置いておいた
あのクマのぬいぐるみと目が合った。
おもむろにポケットに手を入れ
ミドリからのメモを取り出す。
雨に濡れた上、乱雑に仕舞い込んだせいで
紙はクシャクシャで、文字も滲んでいたが
『次に会えるまで大事にして』
見慣れたミドリの字で、そう書かれていた。
机の上のクマを手に取る。
雨に濡れ、乾ききっていないそれは
首をもたげて、少し落ち込んでいるようにも見える。
その姿が
港に置いてきたミドリの姿と重なった。
「……てめェの大事なモン簡単に人に押し付けやがって。どうしろってんだ……」
スモーカーは少し後悔していた。
あの時——
抱き付いてくる小さな身体が
あまりにも弱々しく、頼りなくて
そんなミドリを残していく罪悪感からか
また会える、なんてつい口を吐いて出てしまった。
再会できる保証なんて、どこにもないのに。
もう、自分があの街へ戻ることは
きっと二度とないだろう。
「……最低だ……」
その時、勢いよく部屋のドアが開く。
「スモーカーさん!!」
「……ノックを知らねェのか、てめェは。」
「すみません!あ、それは…」
たしぎはスモーカーの手に握られたぬいぐるみを見るなり、片手で口を押さえた。
「スモーカーさん。
彼の見た目には似合わない、可愛らしいクマを見て
笑いを堪えながらも、小馬鹿にしている態度を
消しきれていないたしぎに
スモーカーは握った拳を震わせながら立ち上がる。
「これは…あいつのだ。」
「あいつ……ミドリですか?」
「………。」
「きっと今ごろ寂しがってますね。」
「……てめェ、何か用事があったんじゃねェのか。」
「あ、ご、ごめんなさい。進路の確認をしたいと航海士さんが……」
クマのぬいぐるみを机に戻し
スモーカーは部屋を後にした。