第二章 〜焦がれる〜
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同時に、やっぱり私は
スモーカーさんが好きなんだと再確認できた。
「……あら、可愛らしい子。」
ふと、女海兵さんが私の存在に気付いた。
「なんだミドリ。いたのか。ヒナ、てめェはさっさと帰れ。」
「言い方!ほんと失礼な男!とにかくスモーカー君!これ以上問題を起こしたら本気で怒るからね!ヒナ激怒!!」
「うるせェな。おれのやり方は変えねェ。」
言いながらヒナと呼んだその人を
煙を払うような手つきで追い払うと
そのヒナさんは、この男は全く…と
文句を言いながら私の横を通り過ぎていく。
「お疲れ様。」
去り際にそう言って向けてくれた笑顔が
優しくて、美しくて
それは女の私でもドキッとするほど。
こんな綺麗な人、そうそうお目にかかれない。
スモーカーさんの恋人だろうか。
よく考えたら、とてもお似合いな2人。
一気に気持ちが沈み、心が重くなる。
重い足取りでスモーカーさんの隣に座る。
「休憩か。」
スモーカーさんからの問いかけに頷く。
『あの人だれ?』
勇気を出して、聞いてみた。
「あ?今のか?どうだっていいだろ。」
『仲良さそうだった』
こんなこと書いたら、勘のいい人なら
私が嫉妬しているのに気付かれてしまうかな。
けど
「今のを、どう見たらそう見えるんだ。」
そう言いながらスモーカーさんは鼻で笑っていた。
どうやら、そういう勘は鈍いらしい。
「訓練兵時代の、ただの同期だ。」
煙を吐きながら、ちゃんと教えてくれた。
同期なら長い時間を一緒に過ごしてきたんだろう。
ああいった言い合いも納得できる。
隠しているわけでも
嘘を吐いているわけでもなさそうで、安心した。
好き。
私、スモーカーさんが好き。
勢いで、メモにそう書きそうになってしまったけど
やっぱりやめた。
文字ではなく、自分の声で、言葉で
きちんと伝えたくなってしまったから。
もしも、声が出せたら
真っ先に気持ちを伝えるのに
私には、それができない。
「先に戻るぞ。そろそろたしぎのヤツが呼びに来そうだ。」
面倒臭そうに立ち上がるスモーカーさんに
正面から思い切り抱き着いた。
本当は怖い。
でも、私の気持ちを知って欲しい想いもある。
だけど、まだ伝えられない。
色々な感情が入り混じって混乱し
気付いたら自然と体が動いていた。
大きなスモーカーさんの体。
身長差のせいでお腹に抱き付く形になり
頭の上から声が降ってくる。
「なんだ?腹でも痛ェか?」
首を横に振る。
「何があった。」
「………」
腕に力を込めて、お腹に顔を埋めた。
スモーカーさんはいつもジャケットの下は
何も身に付けないから
硬く割れた腹筋と熱い素肌の感触が直に伝わる。
「なんだかわからねェが、こんなとこ誰かに見られたら面倒なことになりそうだ。」
きっと困ってる。
面倒臭いヤツだと、思われてる。
無理やり離されてしまうかも、と覚悟した。
けど
「満足したら、さっさと離れろ。」
そう言って、私の頭に手を置いた。
ずるい。
そんな優しさを見せられたら
どんどん気持ちが大きくなってしまう。
これ以上困らせたくなくて、そっと腕を離すと
スモーカーさんは不思議そうな顔で私を見た後
じゃあな、と一言残して、中庭を後にした。
最後の表情でわかった。
きっと、1ミリも伝わっていない。
今みたいなことをしても、スモーカーさんは私に対して何も感じていない。
それはきっと、少しも意識していないから。
——あの人と恋愛なんて難しいと思うな。
たしぎさんの言葉が、今さら心に刺さった。