第二章 〜焦がれる〜
お名前設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「市民の味方とは思えないくらいの人相の悪さなのに?」
頷く。
「声も態度も大きいし、いつも機嫌悪いし、すぐ怒鳴るし、葉巻臭いのに?」
頷く。
「そりゃ仕事の上では尊敬する部分ももちろんたくさんあるけど、男性としては、素敵な人とはかけ離れた男じゃない!どうして好きになったの?」
自分の上司のことをそんなふうに言ってのけるたしぎさんがおかしくて、思わず笑ってしまう。
『わかりにくいけど優しくて素敵なところもある
もっと一緒にいたい 仲良くなりたい
こんな気持ち初めて』
「まぁ確かに、市民の皆さんには優しいところはあるけど…あの人と恋愛なんて難しいと思うな。」
たしぎさんは頭を抱え
こんなに可愛らしいミドリをたぶらかして、あの男は……と
ブツブツ文句を言っていた。
『特別な関係になれなくても
そばにいられるだけで幸せ』
私の今の正直な気持ちだった。
そのメモを読んで、たしぎさんは優しく笑ってくれた。
「まぁミドリの初恋なら応援したいし、何でも相談してね。」
『ありがとう』
たしぎさんに気持ちを聞いてもらったことで
前に進めそうな気がした。
相手が大物だから尻込みしていた部分もあるけど
応援してくれると言ってもらえて
このまま好きでいていいんだ、と嬉しくなった。
まずは、やっぱりもっともっと仲良くなりたい。
私はまた2人で会いたい一心で
暇を見つけては中庭へ足を運んだ。
スモーカーさんの部屋へ行くには理由が必要だし
仕事の邪魔は絶対にしたくない。
中庭なら、前のように偶然を装って
自然と2人になれると思ったから。
ただこの一週間。
毎日中庭を覗いたけど、時間がすれ違っているのか
一度も会えていない。
今日もいないかもしれない。
残念な結果を覚悟で中庭を覗くと
スモーカーさんの姿を見つけ、心が踊った。
——と、同時に彼の隣に女性の姿が見えて
駆け寄ろうとした足が瞬時に止まる。
たしぎさんかと思ったけど、明らかに違う人。
少し離れた私にもはっきりと聞こえるほど
2人とも声を張って話をしていた。
「今回もまたあなたの尻拭い。もうウンザリよ。」
ピンク色にサラリと流れる綺麗な髪をした
背が高く、スタイルの良い女の海兵さん。
ベンチに座るスモーカーさんの前に立ち
怒っているような口調だった。
「わざわざ説教しにここまで来たのか。暇だな。」
「近くに来る任務があったから、文句を言ってやろうと思ったの!たまには上の言うことも聞きなさい!」
「上の機嫌ばかり取ってられるか。」
「取ったこともないくせに、どの口が言ってるんだか。」
あのスモーカーさんと対等に言い合っている。
心がモヤモヤとした。
スモーカーさんがたしぎさん以外の女の人と話しているところは初めて見る。
あの人と喧嘩できるっていいなぁ。
喧嘩するほど何とやらって言うし。
それだけ2人の関係には遠慮がなく
それなりの絆があるということがわかる。
2人を前に自覚した。
急に現れたこの気持ち。
ヤキモチってやつだ。