第二章 〜焦がれる〜
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「ミドリ、いますか?」
非番の日、部屋でゆっくりしていると
ドアの外からノックと同時に
たしぎさんの声が聞こえたので扉を開ける。
「街へ行くんだけど、一緒にどう?ミドリ今日非番だって言ってたから。」
街への誘いに胸が躍った。
笑顔で頷いて、すぐに支度に取り掛かる。
友達と遊びに行くって、こんな感覚なんだろう。
わくわくしながら待ち合わせ場所である
基地の入口へ行くと、たしぎさんが待っていた。
「刀の手入れをお願いしに、いつもの鍛冶屋さんへ行くんだけど、付き合ってもらってもいい?その後お茶しましょ。ケーキの美味しいお店があるの。」
たしぎさんからの提案に笑顔で頷く。
機嫌の悪そうなおじさんがやっている
刀鍛冶のお店に刀を預けた後
たしぎさんが言っていたカフェへとやってきた。
こんなお洒落な場所でお茶するなんて
私には初めての経験だった。
おいしい……
一口食べたケーキの味に震えた。
「どうしたの?大丈夫?ミドリ。」
様子のおかしい私を心配するたしぎさんへ
メモを書く。
『こんなにおいしいケーキは初めて
友達とお茶するのも』
「苦労してきたものね…」
なぜか、たしぎさんは涙ぐんでいた。
「料理長が言ってました。ミドリ、厨房で頑張ってるって。スモーカーさんも最近ちゃんと食事に行ってるみたいで、それもミドリのお陰だって。一体何したの?」
『忙しくてもちゃんと食べに来てってお願いしただけ』
「私や兵士には怒鳴ってばかりなのに、ミドリには甘いんですよね、あの人。」
口を尖らせ、納得いかないような顔をした。
スモーカーさんの話題に、私は顔が熱くなる。
たしぎさんになら言ってもいいだろうか。
ううん、聞いてほしい。
自分ひとりでは持て余すほどに大きくなってしまったこの気持ちを、誰かに。
『私 スモーカーさんが好き』
少し震える手で書いたメモをたしぎさんに見せた。
「え…好きって……」
表情が固まり、思考が停止しているであろうたしぎさんに、もう一言、書いてみせる。
『初恋』
「……えぇぇぇぇ!!!」
たしぎさんの大声に
店内にいるお客さんからの注目を浴びる。
「あ、ごめんなさい。失礼しました。」
わざわざ立ち上がって丁寧にお辞儀を繰り返すと
たしぎさんは座り直し、私に向き直った。
「は、は、初恋って…あのスモーカーさんに?」
信じられない。
言葉にはせずとも、そう聞こえてきそうなほど
驚いた表情をしている。
私は恥ずかしくて、やっぱり言わなきゃよかったかも、と少し後悔しながら頷いた。