第二章 〜焦がれる〜
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こんなふうに、誰かともっと一緒にいたいと思うのは初めてだった。
『忙しそうですね』
「見りゃァわかるだろ。」
『ちゃんとご飯は食べに来てください』
「あァ、気が向いたらな。」
『明日は来られますか?』
「わからねェよ。」
『私待ってますからね!』
「………。」
『絶対ですよ!』
「わァったよ。しつけェヤツだな。」
言いながらスモーカーさんはスプーンを置き
置いていた葉巻をまた口に咥えた。
私はスモーカーさんの返事に満足して立ち上がり
綺麗に平らげられたお皿の乗るトレイを取る。
「ミドリ。」
書類へと目を落としたまま
スモーカーさんが言った。
「なんだ、まァ…頑張れよ。」
抱き付きたい気分だった。
はい!頑張ります!ありがとうございます!って
大声でそう答えられたら、どんなに良かっただろう。
私は一度食器を置き、スモーカーさんの隣へ行って
その大きな手を掴む。
両手でギュッとして、真っ直ぐに彼を見て
笑顔を見せて頷いた。
少しでも、感謝の気持ちが伝われば、と。
「……さっさと戻れ。」
素っ気なくそう言われ、部屋を後にした。
そんな態度でも、すごく嬉しかった。
スモーカーさんの優しさが伝わったから。
好き。
大好き。
会うたびに好きになる。
厨房へ戻り食器を洗いながら
まだ少し感覚の残る手を握る。
太い指に、ゴツゴツと硬くて熱く、大きな手。
いつかその手が、私に触れることはあるだろうか。
なんて想像を膨らませて
恥ずかしくなり、全身が熱くなる。
自分でも驚くほど
スモーカーさんへの気持ちが大きくなっている。
ーーーーーーー
次の日。
お昼時の忙しい厨房が少しざわついた。
「大佐だ。」
「珍しいな。最近は全然だったのに。」
スモーカーさんが食堂へ来たようだ。
嬉しさのあまり、私はやっていた皿洗いを中断し
カウンターへ顔を出す。
確かにそこにはスモーカーさんの姿があり
彼も私に気付くと、ギロリと目配せをした。
「来たぞ、ミドリ。これで文句はねェな。」
笑顔で頷く。
無理やりな、私からの一方的な約束だったのに
ちゃんと来てくれた。
周りにいたコックさん達が驚いた顔で私を見る。
「すごいな、ミドリ。大佐に食事に来させるなんて。」
「一体何て言ったんだ。」
彼らに得意げに笑顔を見せて、持ち場に戻る。
その日から、任務で外に出ている時以外は
スモーカーさんは食堂へ来るようになった。