きっと愛だった/アーロン
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見下すようにミドリの父親を睨みつけながら
アーロンは手に持っていた札束を
その頭の上へばら撒いた。
「これで足りるか。」
「な、なんだこれは…何のつもりだ!」
「ミドリを買いに来たんだ。」
「なっ……」
座り込んでいるミドリの
背中と脚に腕を通し、抱き上げる。
「この女はもらっていく。文句はねェな。」
呆気に取られる父親を残し、その場を去った。
特に行く宛てはない。
ミドリを抱えたまま
とりあえず船へ戻るため港へと向かった。
自分が人間の女を抱えて現れたら
同胞達はどう思うだろうか。
そんなこと、今はどうでもよかった。
なるようになる。
何よりもおれは
この女の笑顔を守ってやりたかった。
「……あのお金、どうしたんですか?」
アーロンの腕の中でずっと黙り込んでいた
ミドリが口を開いた。
「どこぞの海賊から奪った金だ。何てことねェ。」
「あ……これ、お姫様抱っこですね……」
「最初で最後だ。有り難く思え。」
また黙り込んだかと思えば
アーロンの太い首にしがみつくように
震える両腕を回し、その大きな胸に顔を埋めて
ミドリは静かに涙を流した。
「……私…っ…自由ですか?」
「あァ。女海兵にでも、何にでもなれ。」
「……うぅっ…」
アーロンさんは否定していたけど
私は本当にあなたが大好きだった。
私の話を聞いてくれたことが嬉しかった。
飲みかけのお酒をくれたことが嬉しかった。
一緒に食事をしてくれたことが嬉しかった。
人間嫌いのくせに
私に構ってくれたことが嬉しかった。
何の楽しみもなかった私の人生に
たった数日でたくさんの嬉しい出来事をくれた。
そして今
私を地獄から連れ出してくれた。
「私なんか……買わないって言ったくせに。」
「うるせェ。ただの気まぐれだ。」
愛なんて
言葉は知っていても
どういうものなのかは知らない。
私には愛された経験がないから。
だけどね、アーロンさん。
私、わかるよ。
あなたのそれは、きっと……
…fin