きっと愛だった/アーロン
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「明日にはログが貯まるそうだ。
食料は確保してあるか?
必要なものは各自、今日のうちに揃えておけ。」
船長であるタイガーの声かけを合図に
島へ買い出しに行く者
陸地を満喫するように散歩へ行く者
船番をする者
それぞれこの島の最後の日を過ごしていた。
「アーロンさんはもう町へは行かねェのか?」
甲板でつまらなそうに寝そべるアーロンに
ハチが声をかけた。
「特に用事もねェしな。」
「ミドリに別れを言わなくていいのか?」
「わざわざ行くかよ。たった数回会っただけだ。」
「確かにな。でも人間なのにいい子だったよなァ。」
「………まァな。」
あれから結局、ミドリと会うことはなかった。
「タイのお頭、向こうの港に船が。」
見回りから帰ってきたクルーが
タイガーに報告している声が聞こえ
アーロンは聞き耳を立てる。
「船?海軍か?」
「いや違う。海賊でもねェ、怪しい船だ。
町で聞いたんだが、ここらで人身売買の
船が行き来してるらしい。
大方その手の奴らかと。」
「人の売り買いなんてのを
まだやってやがるのか。人間は。
まァいい。仕掛けてくるようなら相手をする。
見張っておけ。」
「へい。」
「アーロンさん?どこへ?」
タイガー達の話が終わるとアーロンは立ち上がり
仲間達の問いかけに答えることもなく
船を降り、町へ向かった。
——今度人身売買の船が港に来たら売りに出すって
あの日のミドリの言葉が頭の中に響いていた。
ーーーーーーー
「早く来い!」
「嫌!離して!!」
「諦めろ!もう船が来てる!!」
「私やっぱり売られるなんて嫌だよ!!」
ちゃんと働くから!!」
「うるせェ!最後くらい親の役に立ってみせろ!」
玄関の扉が開け放たれ
父親に髪を引っ張られながら
引きずられるようにミドリは外へ出る。
諦めたはずだった。
自分の人生はこんなものなんだと。
このまま知らない誰かに買われて
一生その人の言われるままに生きていくんだと。
でもあの日、彼らの船を見て
自由な彼らの生き方を知って
もしかしたら自分にも
夢を掴むチャンスが少しでもあるんじゃないかと
もう少し、足掻いてみたくなってしまった。
叩かれた身体中が痛い。
引っ張られている頭が痛い。
それでも今は、抵抗するしかない。
「離して!!」
ミドリが今までで一番大きな声でそう叫んだ瞬間
髪を掴んでいた父親の腕の力が緩んだ。
「なっ…なんだ!貴様は!!
どこから来た!このバケモノォ!!」
明らかに動揺している父。
その視線の先には……
「………アーロンさんっ…」
一気に全身の力が抜け
ミドリはその場に座り込んだ。