きっと愛だった/アーロン
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「どこに魚人と2人で飯を食いたがる人間がいる。」
「いいじゃないですか。
私、アーロンさん好きですもん。」
「からかうな。あり得ねェ。種族が違う。」
「種族?そんなもの関係ないです。」
「……本当に変な女だなァ、お前は。」
「まともに育てられていませんから。」
得意げに笑うミドリ。
アーロンは無意識に頬の傷に目をやった。
「……これですか?
今朝父が瓶を投げつけてきて、避けたんですけど
割れた破片が飛んできてたみたいで。」
「相変わらずクソな親だな。」
「心配してくれるんですか?」
「興味ねェ。嫌なら逃げ出せ。」
「そうですよね……」
視線を落としながら
ミドリはポツリポツリと呟くように話し始めた。
「私、もうすぐ売られるんですって。」
「……そりゃァまた
とことんつまらねェ人生だな。」
衝撃的な発言ではあったが
そんなこと、この海では珍しくはない。
さほど顔色も変えずに
アーロンは話を聞いてやった。
「若い女は割と高く売れるそうです。
今度人身売買の船が港に来たら売りに出すって
今日父に言われました。」
「奴隷となるか、男の相手をさせられるか。
どちらにしろ、ロクな人生じゃねェな。」
「はい……一応夢もあったんですけど
叶えられそうにありません。」
「夢ねェ。」
「海軍に入りたいんです。
カッコいいでしょ?女海兵って。
こう見えて体力には自信あるんですよ。
父のおかげで打たれ強くもなったし。」
「……なら、おれ達の敵だな。」
「あ、本当だ。そうなっちゃいますね。
でも、私の夢が叶うことはないです。だから…
今こうしてアーロンさんと食事できてよかった。
会えるのは、これが最後かもしれないし。」
変わらず笑顔を向けるミドリの前に
アーロンは飲んでいた酒を置いた。
「飲め。」
「……これ、美味しくないんですよね。」
「おれの酒が飲めねェのか。」
「あははっ。じゃあ、いただきます。」
ミドリは一口それを飲む。
が、やはり口に合わなかったようで
眉間に皺を寄せた。
「……他に話を聞いてくれる相手もいねェのか
てめェには。」
「……そんなことないですけど…
アーロンさんは同情しないじゃないですか。」
「同情?」
「皆、大変だねとか、頑張ってるねとか
心にもないこと適当に並べて
内心は、この女より自分の方がマシだって
優越感に浸ってるだけなんですもん。
そんな人たちといても楽しくもなんともない。」
「人間なんてそんなもんだろ。」
「それです!アーロンさんは最初から全て悟ってて
こんな世の中クソだって思ってるところが
私と一緒だと思いました。」
「……そうかよ。」
「見た目の違いなんて関係ない。
一緒にいると楽なんです。
だから私はアーロンさんが好きです。」
「………」
ミドリはグビッと残りの酒を飲み干した。
「これ、美味しくないけど
もう一杯飲んでいいですか?」
「勝手にしろ。」
そのまま閉店の時間まで
2人は一緒に過ごした。
一方的に話し続けるミドリの話を
時々相槌を打ちながら
アーロンは静かに聞いていた。