きっと愛だった/アーロン
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その日の夜のことだった。
——カランカラン
「いらっしゃいませ〜!」
店の扉が開く音に歓迎の声をあげると
入ってきたのは
「あ、アーロンさん。こんばんは。」
「こんばんは、じゃねェ。誰がてめェの友達だ。」
明らかに不機嫌な態度でドカッとテーブルに着く。
「でも、また来てくれて嬉しいです。」
「………」
アーロンは昼間にタイガーから言われた
言葉を思い出す。
——明るく振る舞ってはいたがな
あの子は体だけでなく心にも傷を負っていた。
事情はよく知らねェが、お前を慕っているなら
少しくらい顔を見せてやれ。
数日前は綺麗だったミドリの顔。
今日は頬に切り傷ができていた。
「……お頭の命令で仕方なくだ。」
「でも嬉しいです。何食べます?」
「とりあえずラム酒をくれ。」
「はい!」
お頭に言われたから、とは言え
わざわざ町の外れにまで足を運ぶとは
アーロンは自分が一番意外だった。
なぜここまでこの女に構う気になるのか
自分でもわからない。
人間は嫌いだ。
ただ、この女の笑った顔を見るのは悪くない。
全てただの気まぐれだ……
「……なんだ?そんなもん頼んでねェぞ。」
いくつかの料理を肴に
アーロンが3杯目の酒を飲んでいると
ひとり分の食事をミドリが目の前に置いた。
「私の賄いです。今日はもう上がりなので
ここで夕食を食べていこうと思って。」
そして向かいの席に座った。
なぜわざわざここで飯を食う。
おれはお前と食う気はない。静かに飲ませろ。
さっさと家に帰れ。
言いたいことは山ほどあったが
何を言ってもこの女は言うことを聞かないだろう。
まだ数回しか会っていないミドリの性格を
アーロンはよくわかっていた。
「……好きにしろ。」
様々な言葉を飲み込んで、諦めたようにそう言えば
ミドリは嬉しそうに食事を始めた。