きっと愛だった/アーロン
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「私、ミドリって言います。
そのお店で働かせてもらっているんですけど
場所が悪いせいかお客さんが少なくて
呼び込みをしてくるように言われてたんです。」
「それでおれ達が捕まったってわけか。」
「来てくれて嬉しいです。うちはお肉料理が
自慢ですよ。お酒の種類も多いので
たくさん飲んでくださいね。
店長にいいお酒を出すよう言っておきます!」
「てめェはよく喋る女だな。」
「すみません、魚人て初めて見たから
なんだか興奮しちゃって。」
店までの道。
一方的に話をするミドリに対して
適当に相槌をうつアーロン。
仲間たちはこの女の馴れ馴れしい態度に
人間嫌いなアーロンの怒りが
いつ爆発するか、と心配していた。
が、その不安が的中することはなかった。
意外なことに
アーロン自身はそこまでこの女に対して
嫌悪感は抱いていないようだった。
ただ、ひとつだけ疑問があったようで
「…てめェは、おれたちが怖くねェのか?」
店に到着し、ミドリが扉に手をかけた時に
アーロンはそれを聞いた。
それまで笑顔で話していたミドリの顔から
急に笑顔が消えたのを見逃さなかった。
「……人間のほうがよっぽど怖いです。」
目も合わさずにそう呟き
ミドリは扉を開け、4人を店の中に入れた。
「店長、4名様です!」
「はい!いらっしゃ……なっ……」
再び笑顔を作ったミドリの隣に
4人の大きな魚人の姿を見た店長は
慌ててミドリに近寄り、コソコソと話をする。
「ミドリちゃん、お客さん連れてきてと言ったけど
この人たち…」
「ええ。お客さんです。魚人さんですけど。」
「こ、困るよ…うちの店にこんな…」
「おれたちに出す飯はねェってのか。」
オドオドとした態度の店長の前に立ち
ギロリと見下ろすアーロン。
「いえ!す、すみません!すぐにご用意します!」
慌てて厨房に入る店長。
そうだ。
あれが普通だ。
魚人を目の前にすると、一般人は特に
ほとんどの者がああいった態度になるはずだ。
つまりこの女は普通じゃない。
アーロンは再びミドリに視線を戻す。
「あんな人ですけど、料理の腕は確かなんで
安心してくださいね。お好きな席にどうぞ。」
自分がどう思われているかなんて
気にするそぶりもなく
ミドリは笑顔をアーロンたちに向け
エプロンを付けながら厨房へと向かった。
「……変な女だな、アーロンさん。」
「確かにな。まァ酒と飯にありつけるんだ。
いいじゃねェか。」
人間と関わるときはいつも機嫌の悪いアーロンが
この日は珍しく上機嫌で夕食を楽しんだ。