第一章
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
こうして白ひげの船に乗った私に
エースさんは何度も声をかけてくれた。
最初は対応に困った。
正直ひとりにしてほしい時もあった。
毎日のように私のところへ来て
一方的に話をして帰っていく彼。
どうしてこんな私なんかに構ってくれようとするのかとても不思議だった。
ただ、知り合いもいない。
ナースの先輩たちとも馴染めない。
孤独だった私は
次第に彼の存在に癒されるようになった。
気付けば彼が来てくれるのを待っている。
その笑顔を見ると
冷え切った心が暖まるような気さえした。
ーーーーーーー
この船へ来て一週間が経つ頃
エースさんにパパとママのことを聞かれた。
悲しくなるから
なるべく2人のことは考えないようにしていたけど
エースさんになら、と気が変わって話をした。
案の定、涙が止まらなくなった。
でも涙を流せば流すほど
苦しかった胸のつかえがなくなっていく。
その時、初めて気付いた。
私はずっと、泣きたかったんだ。
大好きだった2人を想って
思い切り泣きたかった。
彼が、泣かせてくれた。
張り詰めて千切れてしまいそうだった気持ちが
涙と一緒に流れていく。
隣でエースさんが鼻をすする。
彼も泣いていた。
鼻水を垂らしながら、流した涙を
乱暴に腕で拭うエースさんがなんだかおかしくて
私は笑ってしまった。
久しぶりに、心の底から笑った。
私の心が、彼に救われた瞬間だった。
ふと、エースさんが腕を私の目の前に差し出す。
「よければ、おれで練習すればいい。」
「練習?」
「オヤジの注射……苦手なんだろ?」
「そっか。見られてたんですね。」
彼の優しさが嬉しくて、思わず笑みがこぼれる。
「でもエースさんの腕とオヤジさんの腕は
太さが違いすぎて…」
そう答えると
そういうもんなのか、と残念そうに呟きながら
エースさんは腕を引っ込めた。
「お気遣い、ありがとうございます。」
笑顔を向ければ
エースさんも笑顔を返してくれる。
たくさん泣いて
たくさん笑った日だった。
この船へ来て以来
はじめて朝までぐっすりと眠ることができた。