第一章
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オヤジへの用事を終え
暇になったおれはミドリを探した。
今ごろは休憩中のはずだ。
こう毎日顔を出したら
いい加減鬱陶しがられるだろうか。
だとしても、やはりこのまま放っておきたくねェ。
さっきも、あまり元気はなさそうだった。
甲板へ行くと案の定、海を眺めていた。
「よう。」
「……エースさん。」
また来た、とでも思っているだろうな。
「ここが好きなんだな。」
「……どうしてそんなに
私を気にかけてくれるんですか?」
ミドリからの、初めての質問に
なんだか嬉しくなった。
「私のことなんて、放っておけばいいのに。」
「……おれも、最初はお前と同じだったんだ。」
海を見ていたはずのミドリは
おれの顔へ視線を移した。
横から真っ直ぐに見つめられて
その視線が気恥しく
おれは海の方を向いたまま話を続けた。
「オヤジに拾われたばかりの頃のおれは
ほんとクソガキでな。
この船の誰のことも信用していなくて
おまけにオヤジの命を狙っていた。」
「オヤジさんを?」
「無謀だよな。そんなおれを
オヤジや仲間たちは受け入れてくれたんだ。」
「……そうだったんですか。」
「本当にいいヤツらだ。もったいねェよ。
あいつらの良さも知らずに
このまま塞ぎ込んでるなんて。」
ミドリはまた海の方を向いて
何か考えているようだった。
「……だから、放っておかねェ。」
少しの沈黙が続いた。
ふと、隣を見て驚いた。
ミドリの瞳には今にも溢れそうなほど
涙が溜まっている。
下唇を噛んで、泣くのを堪えているようだった。