最終章
お名前設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
—side エース—
いつも海を眺めていた。
赤髪が建ててくれた墓からは
よく海が見渡せたから。
船の上から毎日見ていたのに
いつまで眺めても飽きることはなかった。
この広い広い海で
仲間達とともに超えてきた冒険の数々を
昨日のことのように頭に浮かべては思い出に浸る。
墓は隣にあるのに、ここにオヤジの姿はなかった。
きっとこの世に未練無く逝けたんだろう。
おれはなぜ逝けない。
いや、答えはわかってる。
「ここだ。赤髪が建ててくれたんだよい。
立派なもんだろ。」
お、今日もマルコが誰か連れてきた。
振り返って、その姿を確認したおれは息を飲んだ。
「オヤジさんっ…エースっ……」
黒い服を着て、花束を抱え
おれたちの墓を前に膝をついて泣き崩れたのは
ミドリだった。
「うぅ…エース…エースぅ……」
——必ず戻る。
約束、守れなくてごめんな。ミドリ。
涙が頬を伝った。
霊体でも涙は出るのか。
ずっと欲しかった答えは出た。
オヤジのお陰で、仲間達のお陰で
おれは生まれてきてよかったんだと思えたんだ。
でも空へ行けない心残りが他にあるとすれば
それはやっぱりおまえだ、ミドリ。
そんなに泣くなよ。
笑ってくれ。
頼むから、ずっと笑っていてくれ。
できれば、元気におまえの元に帰って
抱き締めて、口付けをして
何度でも伝えたかった。
好きだ。
大好きだ。
愛してるって。
でも、ごめんな。
さよならだ。
おれのいなくなったこの世界でも生きていくために
俯いてばかりいたらダメだ。
ミドリの前に座って、手を伸ばし頬に触れる。
こんな体じゃ触れられないことはわかってる。
ミドリの体温すら感じられない。
でもどうか、顔を上げて。
笑ってくれ。
おれの大好きなその笑顔を。