最終章
お名前設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
precious 〜最終章〜
—side ミドリ—
信じられない出来事だった。
まさか、この船でこんなことが起こるなんて。
仲間の命を奪うなんて。
「ミドリ、おれはティーチを追う。
いつ帰ってこれるかはわからねェが
おれの気がすまねェんだ。」
いつもの倉庫に2人きり。
エースは自分の部下が起こしたことの責任からか
少し思い詰めたような表情をしていた。
私は不安でいっぱいだった。
この広い海で
行き先もわからない人を探し出すなんて
あまりに無謀だし、いくらエースが強くたって
帰ってこられる保証はない。
本当は行かせたくない。
「オヤジさんは、反対しているんでしょ?」
「オヤジは許しても…おれは許せねェ。」
「そっか……」
「不安にさせてごめんな。
ケリ付けたら帰ってくる。信じて待ってろ。」
「……わかった。でも約束して。
絶対に無茶はしないでよね?」
「わかってる。」
「………。」
「おい、そんな顔されたら行きにくいじゃねェか。」
安心させようとしてくれているのか
エースは笑って、優しく私を抱き寄せた。
「だって……」
私は笑って見送ることはできそうにない。
痛いくらいに強く、抱き締められる。
次はいつ、この温もりを感じられるかわからない。
身体に焼き付けるように、別れを惜しむように
強く強く、いつまでも抱き締め合った。
「必ず戻る。」
その言葉を最後に
エースが私の元へ帰ってくることはなかった。