第六章
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島に戻ってから5日が経ち
船内ではおだやかな毎日が過ぎていた。
ただおれの心中は全くおだやかではない。
ミドリがあの倉庫へ来ることがなくなったから。
何度か声をかけたが
仕事が終わってないだの、先輩に呼ばれているだの
買い出しへ行く日なんだのと
その度に理由を並べられ、断られた。
もちろんショックだ。
避けられている気がしてならない。
でも、こうなっちまったのは自分のせいだと
身に染みてわかっている。
触れたいのに、触れられない。
一度あの感覚を知ってしまうと
知る前とは比べ物にならないほど辛くて
ミドリに触れられない日々は拷問のように感じる。
ただ、そんなことより一番の不安は
ミドリの気持ちが
おれから離れちまったんじゃないかってことだ。
「悪かった!この通りだ!」
珍しく甲板に誰もいなくて
ひとり海を眺めるミドリを見つけたとき
今しかない、と誠意を込めて頭を下げた。
「ちょっと…エース?」
ミドリは焦ったように周りを見回す。
「嫌わないでくれ!」
もうなりふりなんて構っていられなかった。
誰かに見られたら、それはそれだ。
とにかく今は、大事な女との
こんな状況が続いていることが辛い。
「嫌いって?」
「あんなことしちまって
嫌われても仕方ねェとは思うんだけどよ。」
久しぶりに触れたミドリの手は
いつものように柔らかく、潮風にさらされていたせいか、少しひんやりとしていた。
「手放したくない。」
真剣な気持ちを汲み取ってほしくて
真っ直ぐに目を見てそう伝えれば
ミドリは頬を赤くした。
「嫌いになんてならないよ。」
「そうか…よかった…」
その一言を聞いてホッとしたせいか
体の力が抜け、その場に座り込むと
ミドリも目線を合わせるようにしゃがんだ。
「私のほうこそごめんなさい。
避けるような態度取って。」
ミドリが謝ることなんて何もねェのに。
申し訳なさそうな表情のミドリに
思わず手を伸ばしそうになる。
「エース、今日時間ある?」
「おう。今日は一日自由だ。」
「街に行こう。」
「街?」
「そう。今すぐ。」
仲間達に見つからないように2人で抜け出し
ミドリに手を引かれてやってきた場所は
街のホテルだった。