第一章
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
その日からおれは、ミドリを見かけるたび
声をかけるようになる。
一方的にいろいろな話をした。
仲間たちのこと。
オヤジのこと。
ルフィのこと。
ミドリはただ相槌を打ちながら
静かに話を聞いていた。
楽しんでいる様子もないが
逃げるようなことはなくなった。
今日もまた、甲板で海を眺めていたミドリを見かけて声をかける。
「よう。」
「……エースさん。こんにちは。」
「お。名前覚えてくれたんだな。」
ぺこり、と頭を下げて
また海へと視線を戻した。
笑いもしないし、自分から話をしようともしない。
今はそれでいい。
少しずつでいいんだ。
今日は初めて質問を投げてみる。
「海へ出たのは初めてか?」
「……はい。」
「気持ちいいだろ。
どこまでも広がっていて。今まで自分が
どれだけ小さな世界で生きてきたかがわかる。」
「………」
ちょっと語りすぎたか?
不安になってチラリと横を見れば
真っ直ぐに海を見据えた瞳が少し潤んでいた。
「この船のヤツらは皆いいヤツらだ。
海賊だけどな…楽しくやっていける。」
「……私は…殺されたくないから
とりあえず着いてきただけです。」
視線は海へと向けたまま
少しずつ、ミドリが話し始めた。
「父と母はもういない。
大切なものはもう何もない。全てがもう…
どうでもいいんです。私はもう、ひとりだし。」
嬉しかった。
そりゃ話の内容は辛いし
ミドリが苦しんでいるのが伝わってくるが
少しでも胸の内を話してくれたことが
おれは嬉しかったんだ。
「お前はひとりじゃねェよ。
ここの皆がこれからは家族だ。」
「………」
ミドリはまた、何も答えなくなり
柵の上で腕を組み
そこに顔を埋めて突っ伏した。
「……すみません、ひとりにしてください。」
「……あァ。わかった。」
ためらいはあったが
ほんの少しでも慰めになればと
一度だけ頭を撫で、すぐに離した。
ミドリから特に反応はない。
まだ距離を置かれている。
仕方なくおれはその場を離れ
船室に戻ろうとしたところで声をかけられた。
「よう、エース。」
4番隊隊長のサッチだ。