第六章
お名前設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
待ち遠しかった夜が来た。
いかりを降ろし、船は停泊していた。
皆を起こさないように部屋からこっそり抜け出すと
外は静かな海。
見張り台を登るのは初めて。
下を見ないように、頼りない足場を上がっていくと
そこにいたエースが気付いて、引き上げてくれた。
「よく登ってこられたな。」
「ちょっと怖かった。思ったより高いんだもん。」
「だから遠くまで見渡せるんだろ。」
「そっか。」
笑い合って隣に座る。
2人きり。久しぶりの。
なんだか急に意識したら、言葉が出てこなくなる。
優しい波の音だけが響く静かな空間だった。
「結構冷えるからかけてろ。」
そう言ってエースは毛布を肩にかけてくれた。
「ありがとう。エースは?」
「おれは寒くねェ。風邪も引かねェし。」
そういって得意げに笑うエースが
大好きで、愛おしくて
「……会いたかった。」
少し恥ずかしかったけど、自分から手を繋いだ。
手に触れるのも久しぶりで
冷えた私の指先を優しく包み込む
暖かくて大きな温もりに胸が高鳴る。
「いや、あの、毎日顔は合わせてたけどね。」
照れ隠しにそう言って笑えば
反対にエースの顔からは笑顔が消えた。
「エース…?」
「目、閉じろ。」
少しずつ顔が近付いてくる。
その意味がわかった私は
焦ってエースの胸を手で押した。
「ま、待って。心の準備がっ…」
「ずっと待ってたよ。もう待てねェ。」
反対の手を頬に添えられて上を向かされ
真っ直ぐに目と目が合う。
それが恥ずかしくて思わず目を閉じると
唇に柔らかな感触。
はじめてのキスだった。
チュ、と音を立ててすぐに離れる。
目を開くとまだ目の前にエースの顔があって
もう一度、ゆっくりと重なった。
「悪い、ミドリ…止まらねェ。」
それからは、タガが外れたように唇を重ねた。
何度も何度も。
エースが軽く啄むように吸うから
その度にチュ、チュと音が鳴って
私は恥ずかし過ぎて目をぎゅっと閉じながら
それを受けるだけで精一杯で。
繋がれていたはずの手はいつの間にか
私の腰に回されて、体も密着している。
私もそっとエースの首に手を回した。
肩にかけていた毛布が落ちていることにも
気付かないほどに夢中だった。
角度を変えて、優しいキスが交わされた。
今までの寂しかった心が嘘のように満たされた。
恥ずかしくて
嬉しくて
愛おしい。
好きな人とのキスが
こんなにも素敵なものだったなんて。
それを知ってしまった私たちは、この日から
皆の目を盗み、時々2人の時間を作るようになった。