第五章
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視界いっぱいに星空が広がって
皆の気配を感じながらも、その姿は見えなくて
不思議な感覚だった。
オヤジさんのこの大きな船は
私にとっては広い空間だと思っていたけど
見上げる夜空はあまりにも大きくて
それに比べてたらちっぽけな物だと気付かされる。
これからもこの広い広い世界を
エースや皆と一緒に旅していくんだろうか。
海賊船に乗っている以上
危険なことももちろんあるけど
だからこそ、こんな何気ない毎日を幸せに感じる。
そんな日々が少しでも長く続いていきますように。
ずっと一緒にいたいと思った。
皆と、エースと。
いつまでも、どこまでも。
「ミドリいる?」
「はっ、ごめんなさい。
あまりに綺麗で見惚れてました。」
「声がしないから寝てるのかと思った。」
先輩の冗談に笑いが起こる。
完全に自分の世界に入ってしまっていた。
恥ずかしい……
その時だった。
「……隣にいたのか。」
すごく小さな、呟くような声だった。
きっと私以外には聞こえていないくらいの。
左隣から優しく囁かれたエースの声。
私も気付かなかったし、私が声を出すまで
きっとエースも気付いていなかった。
私たちが隣同士で寝そべっていたことに。
「本当だ。」
左を向いて、彼だけに聞こえるように
小さく囁くけど、暗くて顔はわからない。
その時
なんとなく床に置いていた左手に何かが触れた。
それは私の手より大きくて暖かくて
少しずつ私の手を包み込んでいった。
すぐにわかった。間違いなくエースの手。
驚いてもう一度左を向いたけど
やっぱり真っ暗で顔は見えない。
この暗闇で、皆にバレることはないけれど
なんだかいけないことをしているような
でもずっとそうしていたいような
落ち着かない自分の気持ち。
心臓はずっとドキドキしている。
顔は熱い。きっと真っ赤。
でもそれも、暗闇でバレないのをいいことに
包まれた手を上に向けて、彼のそれと掌を合わせ
私から、そっと指を絡めた。
それを受けて、ギュッと一層強く握られる。
流星群は一番活発になったようで
これまでにないくらいに次々と流れていた。
でも、ひとつひとつは
瞬く間に消えてしまうほど儚い。
幻想的なその空に願った。
ずっとずっと
おじいちゃんとおばあちゃんになっても
エースと一緒にいられますように。
これだけたくさんの流れ星に願えば
絶対に叶うはず。
数えきれないほどの星々を見上げながら
私たちはいつまでも手を繋いでいた。