第五章
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precious 〜第五章〜
—side エース—
夢かと思った。
そうなれば嬉しい、とは思っていたが
まさか本当に、ミドリも同じ気持ちでいてくれたなんて。
おれたちは恋仲になった。
あの後、2人で船へ戻り
まだ甲板で待っていたナース達にミドリを託し
そのまま別れた。
一夜明けて、朝飯の時
食堂にミドリの姿はなかった。
早く会いたい。
会ってちゃんと
夢ではないんだと確信したい。
こうして甲板にいれば会えるんじゃないかと
用もないのに居座り続けている。
「よう、エース。暇そうだな。」
おもむろに声をかけながら隣に腰掛けてきたのは
サッチだった。
「あァ、まァな。」
サッチは食堂での仕事の合間に
休憩に出てきたようだった。
暇を持て余しているおれ達の前を
ナースが何人か通りかかる。
その中にミドリの姿を探すが見つからない。
「なァなァ、この船の暗黙のルール知ってるか?」
「暗黙のルールだ?」
ナース達を横目で追いながら
唐突にサッチが聞いてきた。
大きな船団だ。
生活する上で、もちろん決まり事はたくさんある。
が、暗黙のルールなんてのは初めて聞いた。
サッチはナース達がいなくなるのを待って
話を始めた。
「おれ達クルーがオヤジのナースに手を出すのは
御法度だってルールだ。」
「なっ……へ、へェ〜…どうしてだ?」
「この船はナース以外全員男だからな。
万が一、争いが起きねェためだろ。」
「オヤジが言ったのか?」
「オヤジはそんな小せェこと気にしないだろうが
あからさまに誰もナースに手を出してねェだろ?
だから暗黙なんだ。」
「………」
心臓がバクバクとうるさい。
ミドリもオヤジのナースだ。
おれは、ルールを破っちまったことになるのか?
このことが皆にバレたらどうなる。
だんだんと汗ばんでくる掌を隠すおれの横で
サッチはさらに話を続ける。
「だがよォ、おれは影でイチャコラしてる奴らが
いるんじゃねぇかと思うんだ。」
「そ、そんなことねェだろ。」
「ナース達は美人揃いだろ?男だらけの生活じゃ
癒しを求めたくなるに決まってんだろ。」
……確かに
おれもミドリには癒されている。
でも、おれの場合は
手を出しちまったとか、そんな軽いものじゃない。
心底惚れて、あいつが必要で
ずっとそばにいたいと思ってる。
だから気持ちを伝えたんだ。
癒しを求めているわけでも
いっときの欲を満たすためでもねェ。