第四章
お名前設定
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やっぱりまだ街にいるのか。
それとも人攫いか何か、そういう奴らに……
どんどんと悪い方へ考えが及ぶ頃
大きな木の下に人影が見えた。
ミドリだ。
雨宿りをしていたようで
つまらなそうに座り込んでいた。
安堵のため息を深くひとつ吐き
大声で名前を呼ぶ。
「ミドリ!!」
そばへ駆け寄るとミドリも立ち上がった。
「エース?どうして…」
「ナース達からお前が戻って来ないって聞いてよ
迎えに来た。」
走り回ったせいで乱れた息を整え
レインコートを渡すと
ミドリはそれを受け取りながら
申し訳なさそうな顔をした。
「ごめんね?わざわざありがとう。
心配かけちゃったね。」
「いや、無事でよかった。
ここは濡れなくていいな。」
木を見上げれば、青々と茂った葉が
雨からおれたちを守ってくれている。
と、ミドリがふいに手を伸ばし
水が滴るおれの髪に触れた。
「エース、びしょ濡れ。」
近い。顔と顔が。
「だ、大丈夫だ。気にすんな。」
どうしても昨日のことが頭を過ぎって
おれはミドリから一歩離れた。
うっかりまた、触れてしまうかもしれない。
ミドリは行き場を無くした手を胸の前で握り
少し戸惑っているようだった。
「おれはどうせ裸だし、風邪引かねェからよ。」
フォローするように笑顔を見せれば
ミドリも安心したように笑った。
「あ、私タオルある。
買ったばかりの新品だよ。」
得意げに言いながら、袋の中からタオルを出し
おれの頭にかけてくれた。
また、距離が近くなる。
「ありがとう。借りるな。」
熱くなる顔をタオルで隠すように
グシャグシャと髪を拭く。
雨が弱まるまで、おれ達はここにいることにした。
「また随分とたくさん買い込んだな。」
ミドリの隣には
デカい買い出しの袋が置かれている。
「思ったより安くて、調子に乗っちゃって。
そしたらすごく重たいし、迷子になっちゃうし
雨まで降ってきちゃって…」
「踏んだり蹴ったりだな。」
「すごく不安だったから
エースが来てくれて嬉しいよ。」
ふわりと笑ういつもの笑顔に鼓動が速くなる。
昨日、あんなことをしちまったおれに
嫌な顔ひとつせず、いつも通り接してくれるミドリに
胸が救われた。
「ミドリ。話があるんだ。」
真剣な顔でそう言えば
ミドリも笑顔が消え、おれを見つめた。