第三章
夢小説設定
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「2番隊が無事戻った!存分に飲めェ!!」
「オウ!!」
三日月の周りで星が輝く綺麗な夜空の下
オヤジさんの号令を合図に宴が始まった。
甲板のあちらこちらでテーブルを広げ
4番隊の皆が用意してくれた料理を肴に
クルーがお酒を飲みながら大口開けて笑っている。
私はナースの皆と端の方に固まって座っていた。
「ミドリ、お酒飲んだことないの?」
「はい。今まで機会がなくて。」
「飲んでみなよ。これとか飲みやすいよ?」
先輩に勧められて、生まれて初めてお酒を飲んだ。
「ほんとだ。美味しい!」
「あげるわ。」
「ありがとうございます。」
オヤジさんの周りに2番隊の皆が座っている。
今回の航海の話で盛り上がっているようだ。
エースもその輪の中にいた。
口いっぱいに料理を頬張って
楽しそうに仲間たちと話をしている彼の様子に
私も自然と笑顔になる。
昼間に言いかけていたことを確認したかったけど
この雰囲気では近くに行くのも難しそう。
でもエースもとても楽しそうだし
私も楽しいし、話ができなくても
同じ空間で同じ時をこうして過ごせているだけで
今日はなんだか幸せだった。
「ちょっとミドリ、大丈夫!?」
「はい、幸せです〜。」
「あんた飲ませすぎよ!」
「美味しい美味しいって言うからつい。
ごめんねミドリ。向こうで休む?」
「じゃあ、少し涼んできますね。」
「ひとりで平気?」
「大丈夫です。」
顔が熱く、頭がふわふわしていた。
とてもいい気持ち。
足腰が少しフラつくけど
一応真っ直ぐには歩けてる。
人気のない後甲板へ登って
柵に手をかけ、空を見上げる。
変わらず星たちが綺麗にキラキラと輝いて
少しひんやりとした夜風がほてった頬を撫でた。
遠くでは皆の騒ぐ声が聞こえて
少し暗いこの場所がとても心地いい空間だった。
星を見ていて、ふと両親を思い出す。
私をひとり残して向こうへ逝ってしまって
心配で仕方なかったに違いない。
パパ、ママ。私は大丈夫だよ。
とても素敵な人たちに出会うことができた。
ひとりじゃないから、安心して。
この船で、精一杯頑張っていくよ。
星に向かって誓った。
今でも時々
ものすごく2人に会いたくなることがある。
涙を流すこともある。
正直言うと、今も少し泣きそう。
それでも平気でいられたのは
ここにいる皆のおかげ。
エースのおかげ。
「気分でも悪いのか?」
足音が聞こえたかと思えば
隣に現れたのはエースだった。
考えていた当の本人が急に現れてドキッとする。
「お酒って初めてで。でも大丈夫。」
「ここいいな、静かで。向こううるさくてよ。」
「エース達が無事帰ってきてくれて
皆嬉しいんだよ。」
「……泣いてたのか?」
「えっ……」
どうしてこの人は
ささいな私の変化を汲み取ってくれるんだろう。
期待しちゃいけないのに
これ以上、気持ちが大きくなってしまったら
その分傷付くことになるのに。
好きな気持ちが止まらなくなってしまう。
「両親のこと思い出してて、少しだけ。」
俯いて、目を擦る。
「でも、もう大丈夫だよ。」
「泣いたっていい。でも泣いた後は笑えよ。」
エースの大きな手が伸びてきて
顎を支えられ、上を向かされる。
「お前は笑顔が一番だ。」