第三章
夢小説設定
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「そうだ。まだちゃんと言ってなかったね。」
「なんだ?」
「おかえりなさい、エース。
無事帰ってきてくれて嬉しい。」
手を伸ばしてしまいそうだった。
向けられた無邪気な笑顔
やわらかそうな白い肌
よく通る明るい声
コイツの全てをおれだけのモノにしたい。
これまでの人生で経験したことのない気持ち。
完全なる下心。
どう処理したらいいのかわからない。
ただただ、触れたくなった。
その気持ちを必死に堪えるように
行き場に迷った掌を強く握る。
「エース?」
喋らなくなったおれを心配したのか
不安げに顔を覗き込むミドリに
鼓動は速くなるばかりだ。
「あァ、いや…なんでもねェ。ただいま。」
誤魔化すように、とりあえず笑ってやると
ミドリもまた、笑う。
こういう時はどうしたらいいんだ。
これまで、自分の思うままに生きて
やりたいことをやりたいようにやってきた。
でも今回のこれに関しちゃ
好きなようにはしちゃいけねェことくらいわかる。
一方的なおれの気持ちで
ミドリに触れていいとは思わない。
ミドリの気持ちが知りたい。
さっきミドリはおれのことを
自分にとって大きな存在と言ってくれた。
好意を持ってくれてるのはわかるが
だからと言っておれと同じ気持ちとは限らない。
男として、おれを意識してくれているのか。
知りたい。
ウジウジ悩んでるなんて、おれらしくねェ。
「なァ、ミドリ……」
「ん?」
「お前は——」
「ミドリ〜!」
意を決して聞こうとした瞬間
甲高い声に遮られた。
ナースのひとりがミドリを探しにきたようだ。
「ここにいたのね!オヤジさんの薬の時間!」
「わっ!本当だ!すぐ行きます!
ごめんエース、またね!」
「おう。」
結局ミドリの気持ちは確かめられないまま
残念なような、なぜか少しホッとしたような
不思議な気持ちだ。
好きな女に自分を好きになってもらうには
どうしたらいいのか。
さっきとはまた少し違うモヤモヤが
胸の奥に生まれた。