第一章
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precious 〜第一章〜
ミドリ。
おれたちの出会いを覚えているか。
ひどく塞ぎ込んでいたおまえを
おれはどうしても放っておけなかったんだ。
ーside エースー
「島の診療所の娘だ。この騒ぎで両親を亡くした。
医療の知識はあるようだから、連れて行く。
マルコ、色々教えてやれや。」
「へい。」
オヤジのナワバリの島で暴れ回っていた
馬鹿な海賊たちを全滅させると
オヤジがおまえを拾ってきた。
持病が進行してきたオヤジのため
船医であるマルコを中心に医療チームが組まれ
何人かナースとして女を迎えるようになっていた。
ミドリもその一人として、この日から加わった。
両親を殺されたばかりで
突然こんな海賊船に乗ることになり
絶望していたんだろう。
この世の終わりのような表情をしていたのを
よく覚えてる。
ーーーーーーー
数日後。
おれたちを乗せたモビーディック号は
拠点にしている島に帰ってきていた。
「あの子、ミドリって言ったっけ?
全然喋らないのよ。」
「ほんと。親を失って辛いのはわかるけど
もう少し愛想良くしてくれてもいいのにね。」
「オヤジさんも
何であんな子を連れてきたのかしら。」
「医療チームの空気が悪くなるわ。」
船内の通路の向こうから
ナースたちの話し声が聞こえた。
ミドリの話題だった。
予想通り
角を曲がると3人のナースと鉢合わせになる。
「あ、エース隊長。」
「こんにちは。」
「おう。」
さっきまでとは別人のような声色になって
笑顔を作っておれに挨拶をする。
女って怖ェ。
そのまま甲板へ出ると
端の方でミドリがひとり座っていた。
何をするでもなく
ただ座り込んで一点を見つめている。
その姿に、おれは
この船へ来たばかりの頃の自分を重ねた。