第三章
夢小説設定
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「エースも休んできたら?疲れてるんじゃない?」
そんなおれの様子を気にするそぶりもなく
ミドリが心配そうに顔を覗き込んできた。
「あァ。でも、少しここにいていいか?」
風に煽られた帽子を深く被り直し
階段に腰掛ける。
「もちろん。久しぶりの本船だもんね。」
ミドリは嬉しそうに笑ってそういうと
さっきまで自分が座っていた場所
おれより2段上に再び座り直した。
「ずいぶん馴染んだようだな。
サッチともマルコとも…楽しそうだった。」
「うん。エースがいない間気にかけてくれて。
ナースの皆とも、気軽に話したり
一緒に食事したりできるようになったよ。」
「良かったな。」
本当に良かった。
ミドリが初めてこの船に来た頃には
今みたいにクルーの連中と談笑する姿なんて
想像できなかったことだ。
こうなることを望んでいた。
こうなって良かったはずだ。
それに、久しぶりに会えて嬉しいはずなのに
胸の奥の黒くモヤモヤとしたものが
どんどん大きくなっていく。
「サッチやマルコが好きか?」
唐突な質問にミドリが不思議そうな顔をした。
自分でもなぜそんなことを聞いたのかわからねェ。
それを聞いて何を確かめたいのか…
「うん、好きだよ。」
そら見ろ。
黒いモヤモヤが更に大きくなっちまった。
「優しくしてくれるし、話してると楽しいし。」
「……いいヤツらだろ。」
「でも、エースが一番好きだけど。」
「……え…」
聞き間違いか?
驚いたおれの表情を見て、ミドリもやっと
自分が口走ったことの意味を理解したのか
両手で口を抑え、しどろもどろに訂正を始めた。
「あのっ、好きってそういう…変な意味でなくて
えっと…何言ってんだろ、私……」
「あァ、わかってる。気にすんな……」
見る見るうちに耳まで真っ赤になっていくミドリの顔。
鏡に映すように、おれの顔もそうなっているに
違いない。それほど熱くなった。
お互いに、お互いの目を見られない。
落ち着いたのか
ミドリがゆっくりと話し始めた。
「ごめん、変なこと言って。でもね…
エースが最初に声をかけてくれてなかったら
今、私はこんなに元気でいられないし
クルーの皆とも仲良くなれてないと思う。
だから、エースの存在が一番大きいんだよ。」
うまく伝えられて安心したようで
再びミドリに笑顔が戻り
少し照れ臭そうな表情をしていた。
「そう言いたかったの。」
ミドリの言葉で
ついさっきまで胸の奥につかえていた
大きな黒いモヤモヤが跡形もなく消え去った。
あァ、おれはやっぱりコイツが好きだ。