第一章 〜真実と彼の笑顔〜
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「熱中症だ。もう落ち着いたし、そろそろ目を覚ますだろうよい。」
倒れているおばあちゃんをすぐに涼しい部屋へと移動させて、テキパキと処置を済ますと
マルコさんは笑顔を見せてくれた。
それを見た瞬間、私は全身の力が抜け
マルコさんの隣に座り込む。
「よかった……」
そして安心したせいか、涙が溢れそうになって
何度も鼻をすすってそれを堪えた。
「怖かったな。」
マルコさんは、前にそうしてくれたように
私の髪をクシャっと撫でてくれた。
「ありがとうございました。ちょうどマルコさんが近くにいてくれてよかったです。」
「……ミドリちゃん、ばあちゃんの病気のことなんだが……」
嫌な予感がした。
マルコさんが私に向き合うように
改まって座り直したから。
「……はい…」
「だいぶ進行してる。俺の力で抑えてはいるものの……それでもあとどのくらい持つか……」
「……そうですか……」
おばあちゃんは癌だった。
マルコさんがこの村に来た時に
見つけてくれた時にはもう末期で
手の施しようがなかった。
マルコさんの力で進行を遅らせて
痛みも出ないようにしてもらってはいるけど
それでも、治すことはできないようで
着実に″その時″は近付いてきている。
マルコさんは往診に来るたびに
「大丈夫だ」「問題ない」と
おばあちゃんを安心させるために
優しい嘘を吐き続けてくれていた。
「おばあちゃん、マルコさん来てから楽になったって喜んでるし、最近も楽しそうだし、私は無理だけさせないようにこれからも見守っていきます。」
「偉いな。」
目を細めて微笑むマルコさんを前に
堪えていた涙が頬を伝った。
「これからはなるべく毎日様子を見に来る。」
それを隠すように膝を抱えて顔を隠す。
「ひとりで全部抱え込む必要はない。」
隣のマルコさんの声が
優しく耳に響いた。
「もっと俺を頼れよい。」
「……ありがとうございます…」
膝を抱えて泣いた。
マルコさんは何も言わず
ずっと隣にいてくれた。