第一章 〜真実と彼の笑顔〜
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「このことは、ばあちゃんにも村の皆にも黙っていて欲しい。余計な心配させて、怖がらせたくないんだよい。」
「……わかりました。でも、どうして私にその話を?」
「……ミドリちゃんは、村の皆とは何か違う気がしてな。」
その一言に驚いてマルコさんを見上げる。
すごく優しい目をしていた。
「気を悪くしたらごめんな。」
「いえ、大丈夫です。マルコさんが、私ひとり村の皆と違うと感じたのは、私だけ外から来た人間だからだと思います。」
「……なるほどね。」
「全く記憶にはないんですけど、赤ちゃんの頃、滝の裏に捨てられていたのをおばあちゃんに拾われて。でも、どうしてわかったんですか?」
「色々な人間を見てきた、長年の勘だよい。」
マルコさんはまたニッコリと笑った。
「ここの村人達は、平穏な暮らしのせいか、争いもなく、人を疑うことも知らず、優しさだけが表情に溢れ出ている。でもミドリちゃんだけはな、目の奥に芯の強さを感じたんだ。」
「芯の強さ……」
「人に流されず、村で俺に壁を作ってるのはミドリちゃんだけだからな。君になら話しても大丈夫と思ったんだ。」
マルコさんは立ち止まると
私の頭に手を置き、髪をクシャッと撫でる。
「まぁゆっくりで良いから、信用してくれたら嬉しいよい。」
「……はい。」
大きくて暖かい掌の感触が頭に残った。
「日が暮れるな。じゃあまたな、ミドリちゃん。」
「……前から言いたかったんですけど、私、ちゃん付けで呼ばれるほどもう子どもじゃないんですけど。」
「俺から見たら可愛らしい女の子だよい。」
マルコさんは最後に笑顔で手を振ると
背を向けて帰って行った。
マルコさんがこの村へやってきたのは
何かを企んでいるわけではなかった。
大事な人の、大事な物を守りたい。
その一心だけだったんだ。
100%信用したわけではない。
でも少しだけ、受け入れてみよう。
白ひげについて語ったときのマルコさんの横顔を思い出しながら、そう思った。