第七章 〜彼の涙と告白〜
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「……ここへ来ると、どうしても思い出しちまうんだ。」
マルコさんは眼鏡をかけ
少しスッキリとした顔つきで再びお墓を見上げる。
「……どうして私を連れてきてくれたんですか?」
「一緒に来たかったんだ。俺が。」
マルコさんは私の方へ体を向ける。
「もうわかってると思うが…」
真っ直ぐに見つめられて
「正直、俺はお前に惹かれてる。」
思わず息を呑んだ。
ずっと、欲しかった言葉だったから。
私も、マルコさんが好きです。
そう、続けようとしたけど
「だが、大切な存在を作る気はないんだ。失った時が辛いからよい。」
「………。」
「もう…大切な誰かを失いたくない。」
大切な誰か…
横を見上げる。
親父さんとエースさんのお墓の名前が
キラリと反射した。
「……私と、本当の恋人になる気はない…てことですね?」
マルコさんはなんだかまた泣き出しそうな
険しい顔で静かに頷いた。
2人を失って
仲間たちと離れて
この人はずっとひとりだったんだ。
大切な存在を作っても
どうしてもまたひとりになることを考えてしまうんだ。
それならひとりで生きていく
そういう気持ちになってしまうのも、よくわかる。
でも
「私も、マルコさんが好きです。」
最後に悪あがきをしたくなった。
「おふたりの分も、一緒にいます。」
だって、せっかく両思いになれたのに。
「マルコさんはずっと白ひげ船長のために命を張って生きてきた。今も親父さんの形見である島を守ってる。そろそろ、自分の幸せを考えてもいいんじゃないですか?」
ここまで言っても
何も答えないマルコさんに
私はだんだんと勢いが弱まる。
「私がマルコさんを幸せにしたいです…けど……」
私の言葉は響かないのかな……
「……やっぱりダメですよね……」
「ミドリ……」
「私、向こうの海の方行ってます。積もる話もあるでしょうし、マルコさんは2人とゆっくり話してきてください。」
居た堪れなくなって
無理矢理笑顔を作り、その場を離れた。
ーーーーーーー
村からは、洞窟を抜けて滝をくぐらないと
海には出られないので
こうしてゆっくりと海を眺める機会はほとんどなかった。
打ち寄せる波の音。
潮の香り。
頬を撫でる暖かい風。
なんだかその全てが私を慰めてくれているようで
反対に私は涙を誘われる。
波の音でかき消されるのをいいことに
思いっきり鼻をすすった。
ーーーーーーー
「……いい女だろ。オヤジ、エース。」
残されたマルコは2人に笑顔を向ける。
「…自分の幸せ、か……。俺だけが幸せになってもいいのか……」
強い風が吹き抜け
白ひげの上着とエースの帽子が同時に揺れた。
何かを感じたように、マルコは口角を上げる。
「ありがとう……また来るよい。」
〜最終章へ続く〜