第七章 〜彼の涙と告白〜
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それは嘘からはじまる 第七章
〜彼の涙と告白〜
あの日のマルコさんの言葉が
何度も頭の中をこだまする。
——キスがしてェ。
ほんのり赤く染まった頬も
熱を持った視線も
——時々勘違いしそうになるよい。
お前は俺のものだと。
思い詰めたような
少し苦しそうな表情も
——この服も、俺の為だと期待しちまう。
私に触れる熱い指先も
全てを鮮明に覚えている。
あのワンピースは
クローゼットの奥の方へとしまった。
しばらく着られそうにないから。
お祭りから3日が経とうという頃
私とマルコさんの間に必要以上の会話はなく
言ってしまえば気まずい雰囲気が
診療所内に流れている。
でもマルコさんはいつも通りにも見えるので
気まずいと感じているのは私だけかもしれない。
今も、これまでと変わらず
私が用意したお弁当を美味しそうに食べてくれている。
私はと言えば、気まずさから早めに昼食を済ませ
洗濯物を取り込むためと理由づけをしてその場を離れた。
だって顔を合わせるだけで
あの日のことを思い出して挙動不審になってしまいそうで。
2人きりなのを、こんなに居心地悪く感じることは今までになかった。
あの楽しかったデートの時間が恋しい。
「ミドリ。往診、一緒に来るか?ばあちゃんとこも行くからよい。」
「あ、はい!行きます!」
洗濯物を畳み終える頃
お弁当を食べ終えたマルコさんに声をかけられた。
午前中の診療と違って
午後の往診は2人きりでの移動時間が多くてさらに気まずいことになりそうなのだけど
勢いで返事をしてしまった。