第一章 〜真実と彼の笑顔〜
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「……そんなに見つめられると穴が開くだろい。」
マルコさんは笑いながら目線を合わせてきた。
こっそり見ていたつもりが、バレていたらしい。
「そんなに怪しい男に見えるか?」
「はい、とても。」
「正直でいいな。」
マルコさんはまた笑った。
ーーーーーー
「よし。問題ないよい。」
「ありがとうね。夕食でも一緒にどう?今日もひとりなんでしょ?」
「あー……」
往診が終わると、いつものようにニコニコと笑顔で食事に誘うおばあちゃんを前に
マルコさんは頭を掻きながらチラリと私を見た。
私は口を尖らせて首を横に振る。
あなたの夕食はありません、とでも言うように。
そうすると、マルコさんは苦笑いをした。
「飯はいいよ、ばあちゃん。代わりにミドリちゃんを借りていいか?少し話をしたいんだ。」
「え!?」
「もちろんいいわよ。夕食までには帰してね。」
「あぁ、もちろんだ。」
2人に流されるまま
私はマルコさんと家を出た。
夕陽が辺りを照らし
村全体がオレンジ色に包まれている。
マルコさんと私は少し小高い丘の上に来た。
ここからは村全体が見渡せる。
「いい村だな。気候も安定してるし、人が皆暖かい。俺はこの村が好きだよい。」
「はい。私もこの村が大好きです。」
「ミドリちゃんは、この村がどうやって作られたか知ってるか?」
「いえ……」
25年暮らしてきて、この村が作られた経緯なんて考えたこともないし、誰かから聞いたこともない。
なのに、ついひと月ほど前に突然現れたこのマルコさんはそれを知っているようで、少し驚いた。
「……ここは俺たちの船長、白ひげの故郷だ。」
「この村が?」
「俺たちはオヤジと呼んでるんだが。もう何十年も前の話だ。オヤジはこの島で生まれた。」
「……知りませんでした。」
「無理もないよい。オヤジはまだ子どものうちにここを出てる。その後海賊になって、手にした金や宝を匿名でここに送り続け、そうしてこの村ができた。」
大きな衝撃を受けた。
この村が、あの白ひげによって作られた?
私たちはずっと海賊に支えられて生活してきたんだ。
マルコさんの言っていることが真実かどうかはわからないけれど
嘘を吐いているようにも見えない。
「今、オヤジの実の息子を名乗る海賊が、白ひげに関係ある人たちを襲ってる。ここが狙われるのも時間の問題だ。」
「えっ……」
「俺はオヤジが守ってきたものを守りたいんだ。」
遠くを見つめながらそう言うマルコさんの瞳は
心なしか、少し潤んでいるように見えた。