第六章 〜初デートと酔っぱらい〜
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翌日。
午後の往診を終える頃
お祭りが開かれる広場の方からは
楽しい音楽や太鼓の音が聞こえてきて
そこへ向かう家族連れがちらほらと歩いていくのが見える。
「賑やかになってきたな。」
「広場の真ん中に薪を組んでキャンプファイヤーするんです。その周りに屋台とかも出たりして。楽しいですよ。」
「俺は荷物を置きに一度診療所へ戻る。後で現地でいいか?」
「わかりました。じゃあ、また後で。」
待ち合わせの約束なんて
なんだか本物の恋人同士のようなやりとりに
胸がドキドキする。
今日はもう一度、マルコさんに会えるんだ。
家に戻り、あのワンピースを着て
鏡の前に立つ。
「やっぱり少し出すぎかな…」
鎖骨のあたりに手をかける。
でも村の女の子たちももっと露出している子は
たくさんいるし
今は夏だし
それにマルコさんだって
しょっちゅうシャツの前を開けてるし
なんて無理のある言い訳を頭の中で並べながら
無理やり自分を納得させた。
結んでいた髪をほどき
唇にうすく紅を引く。
自分で言うのもなんだけど
先ほどとは別人のように女性らしくなった。
「あら、可愛いじゃない。」
満足げに見送るおばあちゃんの笑顔に
勇気をもらって、広場へと向かった。
胸元と肩がスースーする。
足元からはひんやりとした空気が流れ込んでくる。
私を見て、マルコさんは
どんな反応をしてくれるだろう?
楽しみが半分と、不安が半分。
ドキドキといつも以上に脈を速く感じるのは
浮き足立って早足で来たせいか
はたまたマルコさんに会えるせいか。
広場の入り口に、一際背の高い彼が立っていた。
「すみません、待ちました?」
隣に立って顔を覗き込むと
マルコさんは一瞬目を見開き、すぐに笑顔になった。
「今来たところだよい。」
服を着替えた私に対して
どんなリアクションをもらえるだろう
なんて考えは、高望みだった。
「とりあえず何か食うか。いろいろありそうだ。」
そう言いながら、そそくさと広場の中へ行ってしまった。
かわいそうな私のワンピース。
結局マルコさんにとっては
私がTシャツだろうがワンピースだろうが
何を着ていても大した問題ではないんだ。
大人っぽい格好をして
少しでも私を女として意識してもらえたら、なんて考えていたけど
まだまだ2人の距離は縮まりそうにない。
でもこのくらいで落ち込んでちゃダメ。
こうしてデートできるだけでも幸せなことなんだから。
自分にそう言い聞かせて
顔を上げてマルコさんの隣を歩いた。