第六章 〜初デートと酔っぱらい〜
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マルコさんの口から次々と放たれる突拍子もない発言に思考が追い付かなくなる。
要はマルコさんは村のお祭りに2人で行こうと
私をデートに誘ってくれているんだ。
頭の中で整理したところで
一気に顔が熱くなった。
デート。
マルコさんとデート。
「往診以外で出かけることもねェし、いつも診療所じゃ恋人も何もねェからよい。」
「そうですね。わかりました。一緒に行きましょう。」
思わず顔がほころんで、笑顔を向けると
マルコさんも口角を上げ「じゃあな。」と一言残して診療所へと帰っていった。
その背中が見えなくなるまで見送り
顔がニヤつくのを抑えられないまま
熱くなった頬に両手をあてながら家の中へと戻る。
浮き足立つというのは、こういうことなのかも。
もう頭の中は、マルコさんとデートできる
ということだけでいっぱい。
「なぁに?嬉しそうね。」
私の様子にいち早く気付いたおばあちゃんは
同じようにニヤついた笑顔を向けてくる。
「明日、マルコさんとお祭り行くことになったの。」
「あらいいじゃない!おめかししていかないとね。」
「おめかし?」
「いつもの仕事着じゃなくて、可愛い服着て、お化粧して着飾って行きなさいよ。あんたもいい歳なんだから。女の魅力を出していかないと。」
「いいよ、私は。そういうのは。」
おばあちゃんにはこう答えておきながら
そっと自分の部屋へ行き
クローゼットから出したワンピースをあてがって、鏡の前に立つ。
「うん、可愛い。」
前に布屋さんを手伝ったときにもらった
小花柄の布が可愛くて
この夏に着られたら、と時間を見つけて作っておいたもの。
着ていきたい。
でも…
「……ちょっと出すぎかなぁ…」
肩紐が細い、キャミソールワンピース。
鎖骨も、肩も、二の腕も丸出しな上
胸の谷間も見えそうなほど。
もう25歳なんだから、と少し大人っぽい形で作ってみたものだった。
服装ひとつでこんな風に悩むなんて。
いつから私はこんなに乙女になったんだろう。
マルコさんに出会わなければ
こんな自分を知ることもなかった。
帰り際のマルコさんの笑顔が浮かぶ。
私とマルコさんの間には確かに距離がある。
でも、それはこれから埋めていくことができるのかもしれない。