第五章 〜初恋と2人の距離〜
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「ガー……ゴー……」
おばあちゃん、今日いびきすごいな。
そんなことを考えながら目を覚ますと
見慣れない天井が映った。
「えっ!」
慌てて起き上がり周りを見回すと
「ガァー……」
隣の床で豪快に眠るマルコさんの姿。
「マルコさん!?」
そこは診療所の奥にあるマルコさんが暮らす部屋。
寝起きの頭でもすぐに状況が飲み込めた。
私は昨日、マルコさんの治療を待っている間に
寝てしまったんだ。
そして、治療を終えたマルコさんがベッドまで
運んでくれた。
マルコさんのベッド。
マルコさんの枕。
マルコさんの布団。
意識してしまった途端
ドキドキと心臓がうるさくなり
私は慌ててベッドから降りる。
と、その慌ただしさに気付いたのか
マルコさんが大きく伸びをして目を覚ました。
「……お、もう朝か。早ェな……」
「あ、すみません、起こしちゃって…」
「いや…問題ない。」
そう言いながらも、目は半分も開いておらず
ダルそうに頭をかきながら起き上がる姿は
もっと寝ていたかったと言いそうなほど眠そうだった。
寝起きで無防備なマルコさんは
昨日とは別人のよう。
年上の男の人にこう言うのは少しおかしいかもしれないけど、なんだか可愛く見える。
「診療時間にはまだ早いし、私は一度帰るので、マルコさんはもう一眠りしてください。」
乱れた髪を束ねながら言うと
やっと意識がはっきりしてきたようで、マルコさんはこちらを向いて笑顔を作った。
「ミドリ。おにぎりありがとな。うまかったよい。」
不意打ちの笑顔に
雷に打たれたような電撃が走る。
「うし。俺はおっちゃん達の様子でも見てくるかな。」
私が返事もできずにいても特に気にする様子はなく
マルコさんは立ち上がり、部屋を出た。
ずるい。
なんだ今の笑顔。
寝起きのマルコさんは完全に反則だ。
マルコさんへの想いは胸の奥にしまおうと
心に決めたばかりなのに
心臓がもたないほどドクドクとうるさい。
「すき……」
自分でも無意識のうちに
マルコさんが消えた方を見つめたまま
そう一言だけ呟いた。
〜第六章へ続く〜