第五章 〜初恋と2人の距離〜
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「フゥー……」
日付が変わる頃。
大仕事を終え、深く息を吐きながら
治療室から出てきたマルコは
目の前の光景を見て思わず笑みがこぼれた。
テーブルの上には手作りのおにぎりが置かれ
その横で、帰ったはずのミドリが
突っ伏して寝息を立てていたからだ。
「……帰っていいって言っただろうが。」
向かいに座り、遠慮なくおにぎりを頬張ると
疲れた体に優しい塩味が染みた。
「…うまい……」
10個あったおにぎりは
あっという間にマルコの胃の中に収まった。
「…ん……」
夢を見ているのか
眠ったままのミドリが微笑んだ。
それを見て、再びマルコの口元も緩む。
今日の出来事はこの平和な村には
刺激的すぎる事件だった。
ミドリも疲れたことだろう。
マルコはミドリの両足の下に片手を回し
もう片方の手で背中を支えて抱き上げると
そのまま自分の部屋へと運んだ。
あいにく診療所のベッドは漁師達で埋まっている。
仕方なく自分のベッドへとミドリを寝かせた。
仰向けになったミドリの顔に
長い髪がかかり、くすぐったそうに眉をしかめる。
手を伸ばし、そっと髪を払ってやると
再び穏やかな表情で静かに寝息を立て始めた。
ベッドの端に腰掛け、その寝顔を見つめる。
「……こんなオッサンがみっともねェな…」
無防備な寝顔に吸い寄せられるように
マルコは顔を近づけた。
5センチ…4センチ…3センチ……
少しずつ、しかし確実に
唇と唇が近付く。
と、距離が0になる一歩手前でマルコは動きを止め、そのままミドリから離れ立ち上がった。
「さすがにルール違反だな。」
何も気付く様子もなく眠るミドリに布団をかけ
頭をガシガシと掻くと
半ば拗ねたように、自分はその横の床へと
クッションを枕にして横になった。