第五章 〜初恋と2人の距離〜
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「悪かったな…マルコ。助かったよ。」
怪我をして倒れていた漁師さんが
マルコさんへと手を伸ばす。
「俺は何もしてねェよい。それよりもよくここで持ち堪えていてくれた。村に入られて、スフィンクス達を見られていたら、ちと厄介だったかもな。」
マルコさんはその手をガシッと掴み
優しい笑顔を漁師さんに向けた。
「ミドリ、怪我人を運ぶぞ。」
「はい!」
村の人達を呼んできて
怪我をした漁師の皆を診療所へと運んだ。
私は軽症の皆の手当てをし
重体の人たちはマルコさんが治療をする。
私が軽症者の手当てを終えた頃
辺りはすっかり暗くなっていた。
一度家に帰り、おばあちゃんが眠りについてから
マルコさんに夜食のおにぎりを作って、また診療所へと戻る。
重傷者は10人以上いて
マルコさんの治療は深夜にまで及んでいた。
おにぎりを置いたテーブルに着き
ふと今日のことを思い出す。
この目で海賊を見たのは初めてだった。
私の人生の中で見たことすらなかったピストル。
何の躊躇いもなく引き金を引いていた。
相手がマルコさんでなかったら即死だ。
今考えるとゾッとする。
そんな平気で人の命を奪うような人たちが
マルコさんの一言でこの島から手を引いた。
マルコさんはこの大海賊時代の常に頂点にいた
すごい人。
命懸けの世界を生き抜いてきた
自分とはかけ離れた場所にいる人。
2人の距離。
それは私が思っていたよりも
ずっとずっと遠い。
そんな人を
好き、とか、恋をしている、とか
自分と対等の立場で考えていたなんて
ましてや、嘘の恋人役をやってもらっているなんて
なんだか恐ろしい。
図々しいにも程がある。
あんなにすごい人が
私のことを対等に想ってくれることなんて
絶対にあり得ないことなのに。
あわよくば、告白して
本当の恋人同士になれたら…なんて考えていた自分を殴りたい気分だ。
この気持ちは、伝えない方がいいのかも。
そしてマルコさんへのこの想いは
胸の奥へとしまったほうがいいのかもしれない。