第一章 〜真実と彼の笑顔〜
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それは嘘からはじまる 第一章
〜真実と彼の笑顔〜
今日は朝から仕事をしてきた。
仕事とはいっても、この村はそこまで仕事に溢れているわけではない。
農家さんで畑仕事を手伝い
漁師さんと一緒に魚を獲り
布屋さんで織物を手伝う。
そうして、必要なモノを手に入れて生活している。
今日は牧場で乳搾りの手伝いをし
たくさんの牛乳やチーズ、ヨーグルトをもらってきた。
もちろん、お金を手にできる仕事が一番良いけど
今は村の皆がその日暮らしの生活を送っているし
そうやってこの村は成り立っていた。
この村には、長いこと医者がいなかった。
村の皆は昔からの知恵を頼りに
薬草を拾ってきては自分たちで煎じて
ある程度の怪我や病気はなんとかしてきた。
そんなやり方だから、重い病にかかれば
原因もわからないまま呆気なく命を落としていく人も毎年数多くいる。
そんな中、マルコさんが村に来てくれたことは
村の皆にとってはとても安心できて、この上なく有難いことだった。
「マルコ!マルコ!どこに行くの!?」
家に向かって歩いていると
マルコさんが、子ども達に囲まれているところに遭遇した。
「往診に行ってきた帰りだよい。お前らは学校か。」
「うん!勉強してきた!」
「僕たちもマルコみたいな医者になりたいから、勉強頑張るんだ!」
「おう。それは頼もしいな。」
「明日診療所に遊びに行っていい?」
「おう。邪魔はするなよ。」
「やったー!」
マルコさんは小さな子ども達からお年寄りまで
村の皆から大人気だった。
子ども達がいなくなると
私が通り過ぎるのに気が付き
ニコニコと笑みを浮かべながら近付いてくる。
「重そうだな。半分持つよい。」
「大丈夫です。慣れてるんで。」
「いいから任せな。」
そう言うと、半分どころではなく
私が両手に抱えていた物のほとんどを
なかば強引に奪い、軽々と持ち上げる。
「うちへ帰るんだろ?」
「はい。」
「ちょうど、ばあちゃんの様子を見に行くところだ。」
そう言ってマルコさんは私の家に向かって歩き出した。
隣を歩きながら、背の高い彼を
下からこっそりと盗み見る。
確かに見た目は誰にでも優しいお医者さん。
でも元々は海賊で、私が生まれる前から
海で大暴れしていた人。
その首に懸賞金をかけられた大犯罪者だ。
おばあちゃんは、過去は関係ないと言うけれど
悪いことをしてきた人間が、そう簡単に良い人になるとは思えない。
いくらおばあちゃんや村の皆の
病気や怪我を治療してくれているからって
信用していい人なのかどうかはわからない。
この人は何かを企んでいるんじゃないだろうか。