第四章 〜不死鳥と名前〜
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朝日が登り始めた。
季節は夏だと言っても、夜は寒かった。
できるだけ体を丸めて眠ろうとしたけど
結局一睡もできないまま朝を迎える。
まさかこんな場所でひとり
野宿をすることになるとは。
一晩経てば体力が回復して
この斜面を登れるかも、なんて甘い考えだった。
身体中がギシギシと痛くて、少しも動けない。
喉はカラカラに乾いて、お腹はペコペコを通り過ぎて空腹も感じられなくなった。
私はこのままここで死ぬんだろうか。
おばあちゃん、心配してるだろうな。
目が覚めたら私が帰ってなくて
今ごろひとり歩き回って探してくれてるかも。
マルコさんの所にも行って。
そしたらマルコさんも一緒に探してくれるかな。
マルコさんなら、こんな場所でも見つけ出してくれるかも。
こんな死にそうなところを助け出してくれたら、本当の恋人じゃなくても惚れてしまうな。
極限状態で思考がおかしくなったのか
そんなことを考えながらぼんやりと空を見上げていると、鳥が飛んでいるのが見えた。
「……この島にあんな大きな鳥、珍しいな…」
木々の隙間から見えるその鳥は
蒼白く燃え盛る炎のようなものをまとっていた。
「綺麗な鳥……」
いよいよ幻覚が見えてきたのだろうか。
その鳥がだんだんとこちらへ近付いてきたかと思うと、目の前に舞い降りた。
「見つけたよい。」
蒼い炎が大きく燃えたかと思うと
鳥の姿は消え、代わりにマルコさんが立っていた。
「ばあちゃん心配してるぞ。」
あぁ、やっぱり幻覚だ。
じゃなかったら、これは私に都合のいい夢だ。
「おい、大丈夫か?」
幻覚のマルコさんは
私の前に膝を付いて顔を覗き込む。
あぁ、やっぱりカッコいい。
もしも夢なら
触れてもいいかな?
「……どうした?」
両手を伸ばして、マルコさんの両頬に触れる。
髭と骨張った顎の感触が妙にリアルで
自然と涙がこぼれた。